福祉用具 > リハビリテーション > 呼吸器のリハビリ > ICUの呼吸リハビリ
ICUの呼吸理学療法
ICUに入室するのは急性病変および回復の見込みのある重症患者である。
○急性呼吸不全
代表疾患…肺水腫、肺梗塞、肺炎、慢性肺疾患の急性増悪時など。
これらの中でもっとも重篤なものにARDS(成人呼吸窮迫症候群:Adult
respiratory distress syndrome)があり、これは原因が多岐にわたるだけでなく間質浮腫や肺胞浮腫を呈する。
急性呼吸不全は呼吸不全が吸息に生じただけでなく、生命を維持するだけの換気能力と酸素化能力が障害された状態である。肺、胸郭の疾患だけでなく呼吸を制御する中枢神経系、循環器疾患、外傷、外科手術などの因子を背景に持っていることが多い。これは例えば神経筋疾患による急性呼吸不全である。急性呼吸不全の基準は、代謝性アルカローシスの代償としてのPaCO2の貯留や高濃度の酸素投与における低酸素血症の改善の程度が反映していないため、①PaCO2 45~55Torr以上で、pH7.35以下の酸血症(acidemia)を伴う②酸素吸入濃度を60%以上に保っても、PaO2 60TorrまたはSaO2 90%未満としている。病態は、①換気血流比の不均等やシャントの増大による著しい低酸素血症と代謝性アルカローシスの代償としての高炭酸ガス血症②肺のコンプライアンスの低下や気道抵抗の増大③浅く速い呼吸による仕事量の増加④肺動脈圧の上昇による肺血管抵抗の増大などがみられる。
○評価
基本的には呼吸不全患者の評価と同じであるので、特徴的なものを述べる。
急性呼吸不全の臨床症状の特徴および肺理学療法施行時のルーチンな評価、チェックポイントを示す。
臨床症状の特徴
チェックポイント
肺理学療法施行時のルーチンな評価表
<肺動脈カテーテル>
スワンガンツ・カテーテルとも言われる。これは右心系の情報を示し、呼吸不全では肺動脈圧、肺血管抵抗の上昇がみられる。その測定項目と正常値を以下に示す。
<胸部レントゲン写真>
ICUでの撮影は仰臥位で撮影されることが多く、見やすい画像が得られにくい。よく認められるレントゲン像の特徴として以下のようなことが上げられる。
①肺うっ血
②肺間質浮腫および出血:
肺野が暗くなり気管支や血管造影がはっきりしない。斑状陰影が出る。肺容積の減少により横隔膜が挙上し辺縁がぼやける。
③無気肺
区域以上の大きさならシルエットサインがみえる。
④肺炎
浸潤陰影やエアープロンコグラムがみえる。
⑤荷重側肺障害
水分・分泌物が貯留した非炎症性の肺胞浸潤陰影がみえる。
⑥気胸・縦郭気腫・皮下気腫・胸水貯留
⑦肺含気量の増加
○呼吸理学療法
排痰や呼吸訓練が中心となる。人工呼吸については前述した。
ICUにおいては体位そのものが影響を与える。ICUでは患側を上にした側臥位をとることが多く、排痰にも有効である。胸水・血胸の場合も患側を上にするが、浸出液が一側肺の半分以上あるときは患側肺を下にするのがよい。荷重側肺障害では患側を上にするということは腹臥位をとることである。肺水腫でも腹臥位を取る方がよい。しかし、気管支瘻・肺内出血・肺腫瘍では患側上の側臥位は望ましくない。ウィーニング時の呼吸訓練はファーラー肢位で行う。また、スパゲッティ症候群とよばれる多くのライン・ドレーン・カテーテル・チューブがつながれており体位変換時には注意が必要である。次ページに体位とその適応と示す。
<体位排痰法>
適応となるのは、1日の痰の量が30~50ml以上ある場合・1回の治療で5ml以上の痰がある場合・痰が粘稠で末梢にある場合・高度換気障害・術後疼痛による咳嗽不全・意識障害・気管切開・人工呼吸装着時である。
意識障害がある場合は協力が得られないときがある。頭蓋内圧亢進や心不全がある場合には頭低位は禁忌となり、気胸では気道内圧が上昇する操作は一般的に禁忌となる。栄養管チューブで経管栄養食を注入した後30分は排痰法は行わず、トレンデレンブルグ肢位は避けるべきである。
体位とその適応
排痰体位は、修正肢位を用いる。たとえば修正したトレンデレンブルグ肢位は体幹だけを傾け骨盤下肢は水平位を保つのがよい。体位は少なくとも5~10分維持され、十分な効果を得るには同一肢位を30分程度とることが望ましい。体位により低酸素症が増強するなら吸入気酸素濃度を上げて行うとよい。
修正したトレンデレンブルグ肢位 頭部を30°程度傾ける
修正した排痰肢位↓
※気管内吸引
痰をとる方法として、気管内吸引もある。気管内挿管されている場合に必要であり、分泌物のほとんどは線毛運動により気管内チューブの先端近くまで運ばれている。吸引操作は無菌的に行い、感染の予防と低酸素症にならないよう注意する。痰が粘稠な時は大人で5~10ml、小児では0.2ml/㎏の生理食塩水を吸気時に気管内チューブに注入し、バッグで喚起したあと吸引するのがよい。
NICUのリハビリについてはこちら
(福祉用具トップページへ)