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Duchenne型(ディシェンヌ型)筋ジストロフィー(DMD)
(2)症状・機能障害
<臨床症状>
運動発達(頸定、起き上がり、立ち上がり、歩行など)の遅延で発症するが、1歳までに異常に気づかれることは少ない。歩行開始は遅延するが、大多数は1歳6ヶ月ごろまでに歩行可能となる。2歳頃から下腿三頭筋に筋肥大が生じる。肥大にもかかわらず筋力はむしろ低下しており仮性肥大と呼ばれている(図7)。この肥大は咬筋と三角筋に観察されることがある。
3〜4歳頃に、「転びやすい」、「走れない」、「ジャンプができない」などの症状が出現してくる。
幼年期は運動発達が病勢の進展に勝るため、運動能力の向上がみられるが、6歳頃を頂点として低下に転じる。床から立ち上がる際に、下肢筋力低下の代償動作として四つ這い位から手を引きつけ、手で下腿から膝、大腿へと順番に支えながらよじ登るように体を起こし起き上がる独特な登攀性起立〔ガワーズ(Gowers)徴候〕が認められる(図8)。
次第に全身の筋萎縮が進行するが、特に四肢近位部である肩甲帯、腰帯部に著しい。顔面筋の萎縮は軽度である。
歩行は、両足を広げて腰椎前弯を伴った尖足立位をとり、腰を振るようにして歩くアヒル歩行(waddling gait)あるいは動揺性歩行を示す(図9,10)。
歩行不能となる年齢は7〜11歳、平均9歳である。
その後、床上生活では四つ這い可、ずり這いのみ可、座位保持のみ可、寝たきりと運動機能は低下する。
歩行不能後は車椅子生活に移行することが多い。発症初期から筋萎縮に伴う関節変形は起こりやすく、足関節は軽度の尖足を示す。次第に股関節、膝関節、肩関節にも拘縮は発生する。
立位が困難となる時期には、脊柱・胸郭の変形が起こる。
終末期には肋間筋など呼吸筋、呼吸補助筋の萎縮により呼吸障害が現れる。死亡時期は本疾患に呼吸管理が導入される以前の1980年代ころまでは平均20歳で、感染症、呼吸不全が主な死因であったが、感染症治療、人工呼吸器の積極的導入による呼吸管理技術の進歩により著明に延命が進んでいる。
現在では40歳を超えて生存する患者も珍しくなく、死因に占める心不全の割合が増加している。また、精神遅滞を認めない子どもと軽度の精神遅滞を認める子どもが存在する。精神遅滞の個体差は大きいが、精神遅滞自体は進行しない。IQは平均85で、特に言語性知能が障害される。
図7 DMD症例にみられる腓腹筋の仮性肥大
図8 DMD症例の登攀性起立
図10 腰椎前弯での起立・歩行
図9 Duchenne型筋ジストロフィー症児の立位姿勢と歩行の特徴 @股関節の屈曲
A股関節の外転
B腓腹筋の拘縮による尖足
<機能障害>
理学療法の対象は疾患そのものではなく、疾患から生じる障害である。そこで障害の理解が必要となる。機能障害は疾患に、能力低下は機能障害に起因する。
機能障害には一次性と二次性がある。疾患から直接おこる機能障害が一次性で、疾患とは直接的な関係がなくおこる機能障害が二次性である。二次性機能障害は、廃用(長期臥床や不動)、過用、誤用などによって生じる。一般的には可逆性であるが、長期間にわたる存続で重度化し、不可逆性となる場合がある。DMDの機能障害を表2に示す。
表2 DMDの機能障害
表3 DMDの臨床経過とリハビリテーションの目標
表4 DMDの機能障害度分類と特徴的な姿勢と運動
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