福祉用具 > リハビリテーション > 四十肩・五十肩のリハビリ


     四十肩・五十肩のリハビリについて




<概念> 
肩関節周囲炎とは特別に外傷や感染などの原因がなく、肩関節に痛みと運動制限を主徴とするいくつかの疾患(腱板炎、肩峰下滑液包炎、石灰沈着性腱板炎、いわゆる五十肩など)を含んだ1つの症候群で、単一疾患としての輪郭がはっきりしていないものである。
本症はいずれの年齢にも発生するが、中年以降の人に発症しやすいこと、症状がいわゆる五十肩とよく似ていることから、現在では肩の疼痛と運動制限のあるものに対して肩関節周囲炎と診断し、このなかで中年以降という年齢的要素と拘縮を伴うものに対してのみ五十肩と診断するのが一般的である。
症候群のなかの疾患が確定診断できたならば、その時点で肩関節周囲炎という診断名からその単一疾患名に変更される。


<病因>

様々な仮説があり、まだ十分に解明されていない。

仮説1 腱板滑動機構の障害(腱板炎・肩峰下滑液包炎など)
仮説2 長頭腱滑動機構の障害(上腕二頭筋長頭の腱炎、腱鞘炎など)
新仮説 腱板疎部の障害(炎症など)

・ これらは疼痛や関節拘縮の原因となる。
・ 本症は自然治癒する傾向が強いが、その理由もよく分かっていない。
・ 欧米では癒着性関節包炎と呼ばれることも多いが、必ずしも関節内の癒着がみられるわけではない。

<症状>

主症状 肩関節の疼痛、可動域制限(特に外転・外旋)

症状によって3期に分かれ、各病期は4ヶ月続く。

◆ freezing phase :疼痛性筋性痙縮期
⇒滑液包や関節包内に癒着がまだ生じていない時期

・症状の発現から増悪する時期で疼痛(運動時、夜間時、自発、放散痛)が主症状→疼痛部位は時期によって変化していく! 
(烏口突起周辺⇒結節間溝、烏口上腕靱帯⇒棘下筋、大円筋)
※患者は一般的に三角筋を押さえながら痛みを訴える

・夜間時痛は明け方~起床時まで続くこともある。
・放散痛はC5、6支配領域に沿って広がる 
・圧痛部位は肩甲骨棘下窩が特徴的
・運動制限は自他動運動が全ての方向に制限(肩の外転・外旋動作で強い疼痛と運動制限)→腱板断裂の自動運動のみの制限と鑑別が容易


◆ frozen phase :筋性拘縮期
  ⇒滑液包や関節包に癒着が生じ、癒着性関節包炎の状態の時期

・ 拘縮が症状の主体→肩の動きは肩甲骨の動きのみ
☆五十肩では肩甲骨の動きが良好なのに比べ、肩甲上腕関節はほとんど動いていない。肩甲上腕関節の可動域制限が最も肩甲上腕リズムに影響を与え、可動域制限の強いものは肩甲骨の回旋の割合が正常人よりも大きい。

・ 激しい疼痛の沈静
→徐々に最大運動域での突っ張るような運動時痛に変化。肩甲骨の運動筋が分布する頸部~腰背部の鈍痛と不快感が持続。
・ 関節可動域の一定化
・ 経過の長いものには肩甲周囲筋萎縮を認める(特に三角筋・棘上筋・棘下筋)
◆ thawing phase :回復期
・ 拘縮の改善
・ 運動時痛の消失

<理学療法>

評価の前に…

A,基本情報の確認 

○ポイント○
・ 一次性(突発性)か二次性(糖尿病、外科手術などに引き続いておこる)なのか判断する情報を得る
・ 生活環境、労働環境などを含めた住環境に関する医療面接を行う

1)年齢、性別、既往歴に関する情報は重要!関連要因に関して様々な報告がされている。
☆関連要因
「女性」「40才以上」「外傷性損傷」「糖尿病」「長期臥床既往歴」「甲状性疾患」「脳卒中」「心筋梗塞」「自己免疫疾患」「子宮摘出」「腎炎」「肺結核」など

・肩関節周囲炎の70%が女性
・20~30%の患者が罹患した反体側の肩にも発症

2)日頃の生活状況やライフスタイル、労働状況、住環境に関する情報
→ストレス過多によるものも大きい

3)X線像の確認。通常は陰性であるが非活動状態を続けたことによる骨量減少が認められたり、石灰沈着性腱板炎ではX線像によってはじめて診断される。




B.禁忌リスクの確認

・最も深刻なことはROM制限そのものでなくROM制限のもとになってい  る「痛み」。患者様は初期に始まる痛みによるADLの制限や不安感がある程度積み重なってきた時点での受診・診断となることが多い。
→急性期では評価測定からその後の介入にわたって肩関節およびその周辺部の「安静」を最重要視し、慎重に行う。

・主治医による介入の一環としてのコルチコステロイドや鎮痛薬の関節内注射、非ステロイド系消炎鎮痛薬の経口投薬状況の把握。
→薬剤による鎮痛および徐効果を疼痛評価の中に加味する。薬剤により痛みが抑えられている状況下であることを意識せず過激な徒手による介入やADL指導での症状悪化に注意。

☆コルチコステロイド
副腎皮質でつくられ分泌されているステロイドホルモンの総称。この中の糖質代謝に関係しているグルココルチコイドが抗炎作用や免疫抑制作用をもつ。


検査・評価

問診
・現病歴を中心に痛みやROM制限の発生時期
→特に痛みに関しては、いつから・どこが・どのように・どういう状況で痛むのかを把握
・既往歴や日常生活状況、住環境、ライフスタイル、趣味、労働状況、職場環境

視診
・表情から痛みなどによって蓄積されているストレスの程度、夜間に発生した痛みによる睡眠不足の程度
・腫脹の有無や程度、血流状態を反映する皮膚色
・姿勢やアライメント(特に体幹・四肢の対象性)
→本症では痛みから逃避するために肩を軽度屈曲・内転・内旋させ肘を屈曲し、それを対側上肢で下から腕を組むように支える行為がよく観察される。
触診
・発痛点を探る
→烏口突起周辺およびその周辺に限局していることが多い。慎重に!
・頚部、肩関節周辺の筋スパズムおよび筋萎縮の把握

<痛み>
●自発痛・運動痛・圧痛・放散痛
●VASなど(visual analog scale):量的
●MPQなど(pain questionnair):質的
※MPQ
痛みを4項目に分けて評価するもの。質問法。part1は痛みの場所、part2は痛みの性質、part3は痛みの時間的変化、part4は痛みの強さ、からなる。
●誘発テスト

<関節可動域測定>
●日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学会関節可動域表示ならびに測定法により可動域を測定。
→初期の痛みが強い時期ではendfeelを感じる前に防御反応として意識的に抵抗を加える現象がみられる。
→座位と背臥位では可動域が異なるため両方で測定。
→本症では肩甲上腕リズムに異常がみられるため座位で測定する際は肩甲骨の動きもチェック!
→患肢肩関節の外転・外旋がポイント。

●Aplay scratch test(患側肢の手で対側肩部の前後に触れる能力テスト)
●指椎間距離測定(患側肩を内転・過伸展し、母指先端を脊柱に沿って可能な限り挙上。C7棘突起と母指先端間の距離を測定)

<筋力検査>
●MMT
→拘縮期では棘下筋、三角筋、僧帽筋上部、上腕二頭筋などに行う
●握力計
●等速性筋力装置(Cybex )

<ADL検査>
●不自由となる結髪動作、結帯動作やかぶりの更衣動作などを検査
→内外旋を含んだ動作


理学療法プログラムの作成にあたって考えること

・不適切な介入によって慢性化および難治化することがあるので痛みに対処しつつ、その後の関節拘縮や筋スパズムを最小限にするようプログラム作成時には適時・適切・適量を心がける。
・積極的プログラムだけでなくclinical entity(腱板断裂、石灰沈着性腱板炎、インピンジメント症候群など)の場合には、ある程度の期間「安静」を中心とした消極的プログラムも必要。
・痛みが消え、日常生活に支障がない程度ROMが回復した時点で自然消滅的に介入が終了する場合が多い。よって、痛みに対するものを中心としたプログラムから運動療法中心のプログラムへ移行する時期程度から積極的に労働環境や住環境改善のためのアドバイスを行うとともに、セルフケアとしてのホームエクササイズを指導する。

理学療法の実施
A.疼痛性痙縮期B.筋性拘縮期に応じた理学療法を実施する。また、筋拘縮期~回復期においては自宅で行うホームプログラムが重要となる。

○主な目的○
freezing phase:疼痛性痙縮期→鎮痛、拘縮の予防
frozen phase :筋性拘縮期→拘縮の改善

A.疼痛性痙縮期
痛みが強い場合、Dr.診察時に鎮痛のための注射を行ってから理学療法を開始すると効果的である。
注射部位→肩峰下滑液包、烏口肩峰下靱帯、腱板疎部(図   )


●肢位設定:痛みを起こさない最も楽な肢位を選ぶ。
☆背臥位 肩部と肘部の下に枕やクッションを起き、肩関節の強内旋を防ぐ肢位で安定させる。
*肩外転10°~30°、屈曲10°~20°回旋中間位 
→夜間時痛に対しての指導になる。また、就寝時は肩甲帯を保温サポーターや簡易カイロなどで保温することも効果的である。

☆椅子座位 肘部を肘置き部に置く
☆歩行   片麻痺用の吊り帯か三角筋を用い上肢を懸垂位に保持

●寒冷療法:腱板疎部に自発痛、運動時痛が強い場合クリッカーやアイスマッサージを行う。約5~10分

●温熱療法:患部から上腕全体をホットパック。約15~20分

●水中運動:患側肢の前腕に浮きを巻きつけて水中につけ水面に浮かす。体位を変えるなどして肩関節の屈曲や外転方向にゆっくりとした水中運動を行う。

●ADL指導
・安静により局所への機械的刺激を極力減らすことが基本で有痛動作は禁止する。
・ 筋痙性の緩和、局所血流の促進目的で保温サポーターの装着、入浴を勧める。
・夜間時痛に対しての肢位を指導。
・前開きシャツや上着を勧める。(かぶりの肌着は避ける)
・上着の着脱は患側の手・腕から先に入れる。
・編み物、パソコンを打つ、重い鞄や買い物籠を持って歩くなどの動作は控える。


B.筋性拘縮期

●温熱療法 目的:筋スパズム軽減
運動療法前にホットパック(表在温熱療法)や超音波・極超短波(深部温熱療法)などを選択し実施する。
●電気療法 目的:疼痛の寛解と筋活動回復
運動療法前後に経皮的電気刺激療法、干渉療法を実施。

☆刺激点:肩峰外側端、三角筋付着部、上部僧帽筋中間点

●マッサージ 肩甲下筋、大胸筋、広背筋などセラピストの徒手により行い、筋の緊張をほぐす。さするだけでも心的効果あり。

●運動療法 疼痛を十分にとってから関節可動域運動を行うことが大切!並行して肩関節周囲筋の筋力回復のための運動を行う。まずは自動介助運動や等尺性の自動運動から開始し、等尺性の自動運動やストレッチング、徒手や器具による抵抗運動へと進めていく。

☆患者様―人で行える肩関節運動(筋拘縮期~回復期にかけて。ホームプログラムとしても使えます。)

①棒体操 棒の代わりにタオルでもできる。
②頭上滑車 
③Codman体操 
④Connolly体操 
⑤壁押し体操 
⑥四つ這い体操 









 
                    Home (福祉用具トップページへ)


トップページ
選び方のポイント
レンタルか購入か
車いす
リクライニングベッド
歩行器
杖
排泄補助・尿器
入浴補助用具
介護保険について
リハビリについてリンク