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      関節リウマチのリハビリについて





 関節リウマチ(関節リューマチ、リュウマチ、rheumatoid arthritis:RA)は、「多発性の非化膿性の関節炎」、つまりいろんな関節に発生し、細菌などが進入することによるものではない関節の炎症を主症状とする原因不明の全身性疾患です。

羅患する関節は手や足の小さい関節から肩,肘,肘関節などの大関節までに及び、腫脹(はれること),疼痛(痛み),運動痛(動かしたときに起こる痛み)や関節可動域制限(関節が曲がりにくいこと)が主症状です。


 このリハビリについては大きく「理学療法」と「作業療法」に分類されます。


 (1).理学療法

 「理学療法」は主に「物理療法」と「運動療法」に分かれます。



1.物理療法


 物理療法は、痛みの緩和・消炎を目的とし、運動療法の前処置として用いられることが多いです。
     

a.温熱療法
 関節拘縮ともなると運動時に関節周囲の軟部組織に痛みを生ずるが、このような炎症による痛みのメカニズムと異なる場合には、炎症はあっても軽いので、運動療法の前処置としてホットパックなどの温熱療法やマッサージを施行することで、関節包、靱帯、筋、腱の伸展性が増し、局所の循環も改善して疼痛に対する閾値も上昇し、運動開始時の痛みが緩和される。
 日常簡単に行えるものである入浴(全身浴)は、40℃前後のぬるめの湯に20分ほど入浴する。温泉にはストレス解消や休息、精神的高揚も作用として含まれるため、総合的な抗RA作用があると考えられている。
 局所の温熱療法にはホットパック、パラフィン浴、極超短波などがある。パラフィン浴は、特に手指の運動療法の前処置として利用される。手指や足趾などの凹凸のある部位にも均一な加温が可能なため、RAには適した温熱療法で、運動療法と組み合わせることで良好なエビデンスが得られている。極超短波は、大関節の関節可動域訓練などの前処置として使用することが多い。

b.寒冷療法
 アイスマッサージ、アイスパックなどが代表例である。

c.水治療法
 部分浴として、渦流浴、気泡浴、交代浴が用いられ、全身浴には、運動浴、ハーバード浴がある。水中での全身運動は、心身のリラクゼーション、筋力維持・増強、関節可動域維持・拡大、心肺機能・体力・持久力の改善、健康増進などの効果が期待できるため、可能なら温水プールへ通うことを勧め、運動療法を指導すると良い。

d.その他
 電気刺激療法やレーザー光線療法がある。



2.運動療法


 RAの運動療法は疼痛管理、関節変形予防を目的とし、発症早期より開始することが望ましい。また、RA患者では運動と安静のバランスが大切であるといわれている。関節を安静にする目安は、関節周囲に触れると著しい熱感があり、まったく動かさなくても痛みがある場合である。しかし、1日休むと5%程度の筋力が失われるので、多少痛みが軽減されれば、なるべく早期に元の生活に戻るようにした方が良い。

◎適応と禁忌
 運動療法はほとんどすべての症例が適応となるが、RAの炎症が強く全身状態が悪いような場合には受動的に動かすなど、症状に応じてメニューを考慮すべきであり、疼痛対策も立てなければならない。腫脹し、疼痛のある関節ではリハビリテーションを行っていくのは困難であることが多いため、薬物療法とリハビリテーションはどちらが欠けても満足すべき成果が得られないことが多い。また、RAだけでなくその他の合併症にも目を向けなければならない。リハビリテーションを行っていく上で問題となりやすいのは貧血や肺線維症による労作時呼吸困難、四肢の浮腫、視力障害、皮膚や毛細血管の脆弱化による皮下出血などであり、これらを含めて合併症の治療、是正を行っていく。
     

a.関節可動域訓練
 関節可動域訓練は自動運動と他動運動があるが、筋力がある程度残存している場合(MMT3以上)には自動運動が主体である。

○肩関節
 肩は屈曲方向への拘縮が生じやすいので、関節包などをいためないように愛護的に可動域の拡大を行う。肩関節屈曲では屈曲角度が120°可能であっても、90°付近で一度疼痛が出現し、それを乗り越えてからまた30°動き最終可動域を迎えるといったことがよく観察される。これはローテーターカフの損傷などにも見られ、Painful-Arc-Syndromとして知られている現象であり、関節包内運動の制限や関節面が滑らかでないため、関節運動の途中で一度impingementが発生するためである。この現象はRAの場合、他の関節においても良くみられる現象で、関節可動域訓練の目標は上記の例では120°を越えて拡大するのではなく、120°までを痛みなく患者自身が意識せずADLの中で使用できることにある。具体的には、まずリラクセーションをはかった上で関節に軽い牽引を加えながら、関節包内の動きを出していく。もし疼痛を伴うようであれば、牽引をやめ関節包のわずかな動きのみに止め、徐々に動きを拡大していく。
関節包内のアライメントが改善し痛みなしで関節包内の運動が可能になれば、軽く牽引しながら自動介助運動を患者とともにゆっくりと行い自動運動へと移行する。疼痛の徴候があれば動きを止めリラクセーションから繰り返すことで現状で動かせる可動域の確保に努める。

○肘関節
 ADL自立のために肘関節は110°以上の屈曲が必要となる。自動運動で肘関節を屈曲伸展させ、少し抵抗を加えることで上腕二頭筋や上腕三頭筋の筋力やストレッチを行う。前腕の回内回外もできれば自動運動で行う。できない場合や拘縮がある場合は他動運動でゆっくり可動域を改善する。

○手関節
 手関節は拘縮しやすいので、手首の掌屈背屈をゆっくりと繰り返す。自動運動や軽度の抵抗運動は拘縮や変形予防に効果的である。
 手指は一つ一つの関節を丹念に曲げ伸ばしする。


○股関節
 仰臥位で屈曲・伸展・内転・外転の自動運動を行う。股関節の拘縮原因は股関節屈曲筋の緊張や関節包の拘縮であり、他動的なストレッチ運動を行い股関節の緊張を緩め運動性を増やす。伸展制限も生じやすいので臥位や立位で伸展方向への運動を行うと良い。

○膝関節
 膝関節の屈曲拘縮は10°以上になると跛行の原因となり股関節や膝関節にも影響が出る。自動運動を主体としてROM訓練を行うが、しっかり大腿四頭筋訓練を行うと膝屈曲筋もストレッチされ、可動域に好影響を与える。

○足関節・足指
 座位で底背屈や回旋運動をして可動域を保つようにする。足指の運動は指1本1本手で動かすようにするとよい。

b.筋力維持、増強訓練
 関節の疼痛があり、ベッド上の安静が長期であると筋肉は萎縮する。RAでは関節破壊が進行すると、筋萎縮も進行する傾向がある。関節可動域と同様に筋力を維持することはADLを維持するために重要である。基本的にRAにおける筋力維持、増強訓練は等尺性訓練を行う。等張性訓練は関節の運動を多く伴うため、関節破壊を進行させる恐れがある。等尺性訓練でも自動運動を主体とし、抵抗運動は軽度が良い。疼痛や疲労が起こらない程度で行う。

○頸部
 RAの関節破壊で注意を要するのが、第一頚椎(環椎)と第二頚椎(軸椎)の間の亜脱臼である。この変化があると、第二頚椎の突起が後方へずれることで容易に頚髄が圧迫されることがある。そのため、頚椎カラーなどで予防することがあるが、これだけでは十分な予防にはならない。頸部の運動については日常生活でも十分動かす機会が多いことから、行うとすれば亜脱臼が増悪しないように屈曲方向への運動は避け、左右への側屈や後屈を頭を押さえて首を動かさないように固定して等尺性の運動をするのがよい。

○上肢
 肘関節、手関節についてROM訓練と同じ方向に軽い等尺性の抵抗運動を行う。患者自身で対側の手で軽く抵抗を加えて行うこともよい。肘関節を伸展し、弾力のあるチューブを引っ張ることも上腕三頭筋訓練になる。

○股関節
 内転・内旋の変形が生じやすく、その予防目的で股関節外転筋群の筋力増強を行うとよい。また、伸展制限も生じやすいので、伏臥位で下肢を伸展挙上させ、保持する大殿筋筋力訓練など行う。

○膝関節
 伸展制限が生じやすいので、大腿四頭筋の筋力増強の重点をおいて行う。大腿四頭筋セッティングやいす座位でいすの脚に通したゴムベルトなどに足首を通し、前方へ蹴り出すような運動や床に足を投げ出すように座って膝を上から押さえるなどの運動がある。

○足関節
 足関節周囲では、土踏まずのアーチの低下により扁平足になることが多い。そのため、中足趾節関節の下に体重がかかり胼胝ができたり、足趾屈筋腱群が引っ張られて槌趾などが生じやすくなる。これに関与する主な筋は前脛骨筋であり、この筋の筋力維持・増強がこれらの変形を予防する。土踏まずを持ち上げるような運動をすると効果的で、例えば、床に敷いたタオルをたぐり寄せるような運動もよい。




 (2).作業療法



 作業療法の目的は関節機能を改善し、ADL維持と社会参加の支援にある。ADLアプローチでは関節への負荷を軽減する動作を習得するよう、関節保護に基づいた指導を行う。自助具の処方は関節保護とADLの自立を支援する。
 社会生活のサポートのために関節保護や省エネ指導のほか、住宅改造などの環境整備、福祉サービスの提供、家族の介助指導や心理的サポートも行う。

a.ADL訓練
○食事動作
 RAの場合は、手指にかなりの変形があっても箸が使える例が多い。これは、手指の変形が徐々に進行するため、その変形に順応していくことに加え、食事は箸でとった方がおいしいという、日本人特有の習慣や心情が加わっていることもある。指での食事用具がなんとか使用可能でも、肩や肘、特に肘の屈曲ができず、食物を口まで運びにくい場合もある。この時は、他方の手で前腕あるいは手を支えて介助する。手で食器を保持できない場合、軽い小さめの食器に少量ずつ食物を移し変えたり、胸と胸の間に食器を抱え込むようにして保持してもよい。肘の屈曲角度が少なく、スプーンなどが口に届かない場合は、用具の長さを伸ばすだけでは口を通り越してしまうため、スプーンや柄に角度をつける。食卓の高さを高くして、肩に無理がかからない程度に少し高めにして、往復距離を短くした方が便利なこともある。

○整容
 頚椎を前屈させると頸部痛が生じる、手が顔まで届かない、手指の変形のために両手で水をすくえないなどの理由で洗顔動作が困難な場合でも、洗面台を高くするのは簡単ではないことが多いため、リーチ機能を補う自助具の利用が実用的である。
 歯磨きは、顎関節が侵襲されて開口制限が生じている場合に小児用歯ブラシを使用すると奥まで磨きやすい。リーチ機能が不足している場合には長柄ブラシを使用する。電動はブラシの利用も良いが、患者の使用感に合わせて検討する。爪切りは、大きめの爪切りを用いると力の効率がよく、市販のもので切りにくい場合は、木板などに爪切りを固定し、弱い力でも押せるようにする。水道栓の開閉はレバー式のものが便利である。


○更衣
 前開きのものは、通常、動きの悪い側の腕を先に通し、次に良い手を後方に回して他方の袖を体側近くまで引き寄せ、袖を通す。手が反対側の肩まで届かない場合は、孫の手やリーチャーで引き上げる。靴下の着脱のおいては、つま先入れとかかとの引き上げが問題となる。ソックスエイドとリーチャーを利用して着脱するのが便利である。

○排泄
 トイレは洋式トイレが望ましい。立ち上がりが不自由な場合には風呂用マットなど身近に市販されているものを利用して、立ち上がりやすい高さに補高するとよい。その際、上肢が使用できるなら、窓枠などにつかまって下肢筋の弱さを補うとよい。後始末では、肩内旋位、前腕回内拘縮をおこしていることが多いので、このような紙の使用は前方からリーチすると良い。しかし、リーチ機能が不十分な場合は、トイレットエイドを使用する。

○入浴
 洗体で不自由になりやすい部位は、足と背中である。長柄ブラシやループ付タオルを使用すると良い。

b.自助具
 自助具の分類は握り動作、リーチ動作、立ち上がり動作の3領域にわけると便利である。

○握り動作の援助
 握力低下、指関節炎などで適応される。この自助具の原則は、てこを利用すること、道具の柄を太くすることなどである。
・レバー式水道栓:蛇口エイド
・ 取手まわし:ノブエイド
・大型爪切り器:爪切りエイド   
・長柄はし
・缶ぶた開け器

○リーチ動作の援助
 肩・肘あるいは股・膝関節の可動域制限や、関節保護が必要な場合に適応される。この領域の原則は、道具類を長くすればよいということである。
・長柄ブラシ
・長柄くし
・ドレッシングエイド
・万能リーチャー
・孫の手
・ソックスエイド

○立ち上がり動作の援助
 筋力低下や股・膝関節罹患で立ちしゃがみが困難な場合に適応される。原則は、垂直移動の距離を短くすることである。
・補高マット
・ 補高用便座
・ ・ハンドレイル         



★関節保護の指導

     

*起き上がり
 両足をベッドの外に垂らし、上体を回旋させながら、片側の肘あるいは前腕を支えにし、伸展を利用して起きる。ただし、肘や肩関節の破壊がある場合には勧められない。また、ベッド柵につかまってもよい。足をベッドの柵、あるいはマットの下に差し込んだ棒にひっかけて上体を起こしている人も多いが、これは棒にひっかける足関節の骨破壊や疼痛が軽度で、ある程度の背屈力があることが条件となる。反動を利用して起き上がっている人もいるが、これは頚椎の関節変化や疼痛がある場合には勧められない。

*立ち上がり
 下肢筋の筋力低下がある場合、椅子に手をついて立ち上がる例が多いが、そのほとんどがMP関節の亜脱臼傾向がある場合には手指背側に体重をかけている。これはMP関節の脱臼傾向を助長することになるので、代わりに机にのせた前腕全体で体重を受けるようにすると、手指への負担はなくなり、上肢のより大きな力で下肢筋力を補える。

3)装具療法
 装具療法の目的は、関節の固定(安定性の獲得)、変形予防、体重の支持などである。装具療法は有効な治療法であるが、RAの場合気をつけなければならないのが、@軽い、A硬すぎない、B患者自身で装着できるよう工夫する、などである。スプリント療法の目的としては、@動きの制限による痛み、炎症の軽減、A関節の機能的位置関係維持による拘縮の防止、B機能改善のために関節の安定性を得る、C活動時の関節へのストレス防止、D拘縮の軽減または矯正、E力源を他の部位から得て作業を容易にする、などである。


@頚椎
 RAでは環軸椎亜脱臼の頻度が高いため、まず頚椎カラーを試みる。頚椎カラーで疼痛の軽減が得られやすい。RA用としてベルクロが前方や側方についているソフトカラーがある。

A肘関節
 肘関節の不安定性、疼痛のためにADLが障害されることがよくある。しかし、市販の装具は重く、RA患者にはつけられない。西田らが軽くて柔らかく、ある程度支持性のある装具を考案したとしているのが、岡大式肘装具である。
      
B手指・手関節
 手指・手関節には高頻度にさまざまな変形が生じる。簡易スプリント、指輪式装具、コックアップ装具などが有効である。

C膝関節
 関節痛では疼痛、不安定性のため歩行困難になる場合がある。全膝関節置換術後にも不安定性を有する場合もあり、膝装具は有効である。支柱付軟性装具などをよく用いる。

D足
 外反扁平足が多い。よく用いられるのが足底板(アーチサポート)である。これは、足の前後方向のアーチと左右方向のアーチを補うことにより、体重を中足指節関節のところから分散させるものである。胼胝形成があり、疼痛が強い場合には、ドーナツ型の除圧パッドを用いたり足底板に降圧用の凹みをつけたりする。

      














 
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