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      DM(糖尿病)のリハビリについて



○糖尿病の概念
  膵ランゲルハンス島のβ細胞からのインスリン分泌の欠乏や、その作用の低下(感受性低下)によって、糖質、脂質、蛋白質の代謝が障害されて、利用されないブドウ糖が血中に増加して高血糖(Hyperglycemia)状態となり、尿に糖が排出され、様々な合併症を併発してくる病態が糖尿病(Diabetes Mellitus)である。その発症には遺伝的要因と環境的要因が関係している。環境因子には過食、肥満、ストレス、運動不足、感染、薬物など多くの因子が相乗的に関与する。

○現代人と糖尿病
 糖尿病患者は交通手段の発達や食の欧米化など、生活水準の向上に伴って増加しており、1997年に厚生労働省が行った我が国における実態調査によれば、強く糖尿病が疑われる人は690万人とされている。日本における1型糖尿病の発症率は10万人に2人と世界でも最も低い水準であるが、2型糖尿病は急速に増加している傾向にあり、特に小児における2型糖尿病の増加が懸念されている。

○病態
 糖尿病はインスリンの量的・質的不足による疾患であるがインスリンの作用は極めて多岐にわたるためその症状も多様である。(表6)中でもインスリンの作用不足は三大栄養素の代謝に大きな乱れを生じさせる。末梢組織・筋での糖利用が低下し、高血糖をきたし、脂質、蛋白質の代謝異常も引き起こし、その結果、肝での糖新生亢進、ケトン体合成を亢進させる。これらの結果、インスリンが欠乏すると高血糖をはじめとして、高脂血症、高アミノ酸血症、高ケトン体血症などが導かれることになる。


・糖尿病の診断
  現在の糖尿病診断基準は1999年に決定された。
1) 糖尿病型(空腹時血糖値≧126mg/dl、75gOGTT2時間値≧200mg/dl、随時血糖値≧200mg/dlのいずれか)が、別の日に行った検査で2回以上確認できる。
2) かつ下記の条件が満たされた場合は一回のみでもよい
 ・糖尿病の典型的症状(口渇、多尿、多飲、体重減少)の存在
・グリコヘモグロビン(HbA??)≧6,5%
・確実な糖尿性網膜症などの存在


・糖尿病診断に用いられる検査
1.血糖値検査
@ 随時血糖値
空腹時や食後などというように時間を問わずに採決したものを随時血糖値という
A 空腹時血糖値(Fasting plasma glucose)
10時間以上絶食させた後の血糖値をさす。臨床的には朝食前の血糖値を採用する。一般に126mg/dl以上を糖尿病型とする。
B 経口ブトウ糖負荷試験(OGTT)
OGTTは、75gのグルコースを負荷し、その後の糖の処理状況を調べる検査である。軽症の糖代謝異常と調べる最も鋭敏な試験方法である。OGTT負荷後1時間の血糖値が180mg/dl以上の場合、正常型であっても糖尿病に移行する確率が高くなる。OGTT時にはインスリン量の測定も同時に行われOGTT負荷前(空腹時)と負荷後2時間のインスリン値からインスリン過分泌の有無が判断できインスリン抵抗性の可能性が予測できる。また30分値より、初期インスリン追加分泌の量や、遅延型か否かの把握も可能である。したがってOGTTより、病態の把握、治療方針の決定、使用薬剤が判断されるようになる。
2.インスリン分泌能
  尿中Cペプチド(CPR)と血中インスリン値(IRI)は、インスリンの分泌状態や分泌予備能の評価に有用である。
@ 尿中Cペプチド排泄量(正常値:50~100μ/day)
インスリン分泌能を評価する指標として、CRPの排泄量を参考にする。
CRPは膵島β細胞からインスリンと同数分泌されるため、内因性インスリン量を間接的に測定するときに有用である。
A 血中インスリン値(空腹時の正常値:3~15μU/ml)
 空腹時の血中IRI値は起訴分泌を反映し、食後やブドウ糖負荷後の上昇は追加分泌を反映する。早朝空腹時の血中インスリン濃度が15μU/ml以上の場合は高インスリン血症と考え、インスリン抵抗性の存在が考えられる。またほとんどの2型糖尿病患者は糖負荷後のインスリン初期分泌反応が鈍くなっているが、このインスリン分泌能の障害を把握する指標としてインスリン初期分泌指数(insulinogenic index)が有用である。すなわち、インスリン初期分泌指数=ΔIRI(30分)μU/ml÷ΔPG(30分)mg/dl<0,4(75gOGTT時)で求められ、糖尿病患者では0.4以下となる。
B インスリン抵抗性
 インスリン抵抗性とは一般的には、血中のインスリン濃度に見合ったインスリン作用が筋・肝などの組織で十分に得られない状態をいう。インスリン抵抗性の簡便な指標の一つとして早朝空腹時の血中インスリン値とグルコース値より計算されるHOMA−IRがある。
 HOMA−IR=IRI(μU/ml)×空腹時血糖値(mg/dl)÷405で求められた値が、1,6以下の場合は正常。2,5以上の場合はインスリン抵抗性があると判断する。しかしこの式を成立させるためには空腹時血糖値140mg/dl以下を対象としなければならず、仮に140mg/dlを超えた状態で測定しても、その値はインスリン抵抗性を示しているのではなく、むしろインスリン分泌能が低下している状態を示している。

コントロール状態の評価
 糖尿病のコントロールにおいては、血糖値のみならず心血管を中心とした合併症の発症を抑制もしくは遅延させることが重要となる。そのためには、血糖値だけではなく、高血圧や高脂血症などのいわゆるメタボリックシンドロームの管理までもが重要になる。
 

1. 血糖コントロール指標
@ 空腹時血糖値(FPG)
FPGの高値はインスリン抵抗性やインスリン分泌不足が原因と考えられる。
A食後血糖値
 食後血糖値は180mg/dl以下が目標であり少なくとも200を超えないようにする必要がある。高値は大血管障害のハイリスクを示す。
C 1日血糖(日内変動:tages)
1日血糖は、各食前・食後と就寝前の計7回の血糖値測定を意味する。血糖値の日内変動を観察することで、インスリン分泌パターンの把握や治療方針決定・変更を検討する手段になる。運動療法の結果として1日血糖の中でも特に食後血糖の変化量や変化率が大きいことから運動療法の効果を食後血糖の変化より観察できる。
D グリコヘモグロビン(HbA??)
 グリコヘモグロビンはその採血時より1~2か月前までの平均血糖値を示す指標である。今や血糖コントロールの世界的標準であり、血糖コントロールで最も重要視されている指標である。一般的に、合併症予防のためには6,5%未満にコントロールすることを目標とするが、高齢者では7,0%未満にコントロールすることが合併症の進行抑制の目安とされている。

2、その他のコントロール指標
 @体重
  肥満はインスリン感受性を低下させインスリン需要量の増加を認めることから、患者の適正体重に改善し維持していかなければならない。また肥満はメタボリックシンドロームを引き起こす基礎をなしている。
A 血圧
血管系疾患のリスクが相乗的に高まることから、血圧管理は厳密に行わなければならない。高血圧合併例の降圧目標は130/85mmHg未満に設定されている。さらに、糖尿病性腎症を合併している場合は125/75mmHg未満と設定されており、腎症の進行予防には血圧管理が極めて重要である。
B 血清脂質
 高脂血症は心血管系疾患の主要な危険因子であり、糖尿病があるだけで3つの冠危険因子を持つことになり、心血管系疾患のリスクとして重要視されている。総コレステロール(TC)200mg/dl未満、LDLコレステロール120mg/dl未満、中性脂肪(TG)150mg/dl未満、HDLコレステロール40mg/dl以上が目標値であるが、冠危険因子の数によってコントロールの目標値はさらに厳しくなる。

○合併症
 糖尿病には種々の合併症が併発する場合が多い。中でも糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害は三大合併症としてあまりにも有名である。本項ではこの三大合併症の他に比較的多い合併症をいくつか解説する。

1、 三大合併症
@ 糖尿病性網膜症
 慢性合併症の一つである。糖尿病性網膜症は、緑内障とともに成人の失明原因としては最も多い疾患である。糖尿病性網膜症はその進行度合いから3段階に分けることができる。
・単純網膜症
  網膜の毛細血管が詰まっていない状態。毛細血管の閉塞した部位の近くに直径15μ~16μの毛細血管瘤を形成する。
増殖前網膜症
単純網膜症が進行すると網膜無灌流域が認められるようになり、新血管が生じる
・増殖網膜症
  毛細血管が詰まり、無灌流域が拡大し、新血管が成長した状態。さらにこの血管を基盤に線維性の増殖膜が形成される。加齢の変化による硝子体剥離により網膜前出血が生じ著名な視力障害をきたす。

A 糖尿病性腎症
 糖尿病性腎症では高血糖が持続すると、糸球体細胞には大量のブドウ糖が糸球体に取り込まれて細胞の代謝異常が生じその結果、コラーゲンなどの物質が蓄積されて形態的・機能的異常を生じる。血圧調節機構が破綻しており糸球体内圧が上昇し、蛋白尿が出現する。臨床症状としては、蛋白尿、腎機能低下、高血圧、浮腫などが挙げられる。進行すると腎不全にいたる。
 予防と治療には血糖管理、血圧管理、脂質管理、食事療法を行う。血糖値は空腹時血糖値110mg/dl未満、食後2時間血糖値180mg/dl未満、HbA?c6,5%未満、血圧は腎障害がない場合130/80mmHg未満、腎障害を有している場合125/75mmHg未満、脂質は総コレステロールを180mg/dl、LDLコレステロールは100mg/dl未満に保つことが推奨されている。食事療法では、塩分制限、摂取エネルギー過剰による肥満防止に重点が置かれる。腎症が進行するとカリウム制限も加わる。また早期には運動療法も有効であるが進行し腎不全期には積極的運動は行わず、体力維持程度にする。浮腫が出現した場合運動療法は禁忌となる。


B 糖尿病性神経障害
 糖尿病性神経障害は三大合併症中、最も早期に出現し、最も有病率が高い合併症である。
・運動神経障害
 i 遠位多発性神経障害
   神経原性に筋力低下、筋委縮を起こす。
 ii 近位性運動神経障害
    糖尿病性筋委縮と呼ばれ、大腿四頭筋,殿筋、腸腰筋、大も内転筋、大腿外転筋などのキンイ部の筋力低下、筋委縮をきたし、中年以降に発症する。急激に発症するタイプのものは血管障害によるもので、非対称性で疼痛、感覚脱失を伴うが、予後良好である。緩徐に発症するものは代謝障害と考えられ殿部、大腿部に好発し、対称性で疼くような痛みを伴う。
iii 単神経障害
          血管病変が原因と考えられ、正中神経、尺骨神経、腓骨神経、大腿神経に急激に発症し、3~6か月で軽快する。
       
      ・知覚神経障害
@ 小径線維の障害
下肢末端に始まる左右非対称の疼痛、異常感覚が生じ、徐々に上行する。疼痛が軽度の場合、冷感、しびれ、焼ける感じ、などを訴える。疼痛が重症化すると、灼熱痛、電撃痛、痙攣のような痛みを生じる。疼痛が夜間に増悪し、両足の温暖、寒冷に伴い増悪するPainful neuropathyがある。
A 大径線維の障害
アキレス腱反射の消失、振動覚、位置覚の障害が起こる。深部知覚障害、下肢腱反射の消失、電撃痛、膀胱直腸障害など高度の自律神経障害の併発を、Pseudotabes diabetesと呼ぶ。


     ・脳神経障害
       神経の栄養血管の虚血が主な原因で、外転神経麻痺、顔面神経麻痺、難聴、反回神経麻痺などがおこる。

     ・自律神経障害
       糖尿病患者の約20~40%に合併し、無痛性心筋梗塞、突然死、腎不全を併発する。
@ 心臓神経障害
副交感神経障害により安静時頻脈、心筋から中枢への痛みの内臓知覚神経障害により無痛性心筋梗塞を生じる。突然死、QT延長の不整脈も発生しうる。
A 血管運動障害
圧受容体機能低下、血管反応低下により起立性低血圧を生じる。
B 消化器機能障害
迷走神経障害にともない、上部消化管の蠕動以上をきたす。食道では嚥下障害、胸骨下灼熱感、胃においては胃部膨満感、吐気、嘔吐などの糖尿病性腎症を呈する。胆嚢では、運動機能低下の結果、大きさが増す。下部消化管では、便秘の頻度が高いが、臨床上、下痢が問題となる。下痢は水溶性で疼痛がなく、夜間に多く血糖コントロール不良例に多く併発する。
C 膀胱機能障害
自律神経障害合併症にうち、約80%は尿路感染などの泌尿器系の障害である。神経因性膀胱は、副交感神経障害により膀胱知覚異常が起こり、尿意減少、1回排尿量増加、進行すれば排尿困難、ついには残尿量増加による充満失禁にいたる。
D 生殖機能増加
50歳代男性の糖尿病患者の約半数に勃起不全がみられる。
E 瞳孔異常
交感神経障害により暗所での瞳孔拡大障害、瞳孔の左右不均等や縮瞳をみる。副交感神経障害により対光反射遅延、輻輳反射の減弱をみる。
F 体温調節異常
交感神経障害により熱刺激に対する血管拡張、血流増加が減弱する。発汗減少・低下は下腿によく認められ、上半身は発汗過多を示す例がある。食事開始後、数秒以内に著明発汗をきたす例を味覚発汗という。



○急性合併症
 ・糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
  DKAはインスリン作用の欠乏により生じる高度の代謝失調状態である。インスリン作用の極度の低下、インスリン拮抗ホルモンであるグルカゴン、カテコールアミン、成長ホルモンの過剰により、糖利用の低下、脂肪分解の亢進が起こり、高血糖と遊離脂肪酸血症を招来する。遊離脂肪酸はインスリン欠乏下の肝では急速な酸化を受け、ケトン体を生ずる。高ケトン体血症が体液の緩衝作用を凌駕した結果起こったアシドーシスと脱水がDKAの本体であり、重症例では昏睡となる。 
@ 病態
糖尿病により増加した遊離脂肪酸から生成されたケトン体が過剰に蓄積すると、血液緩衝能を超え、血液の酸性化を起こす。pHは必ずしも血糖値とは相関しないため、血糖値がそれほど高くないケトアシドーシスも存在する。
 インスリン欠乏は細胞膜Na-K ATPase活性低下を起こし、K欠乏となる。DKAではNaやPの欠乏も見られる。水分欠乏量は100ml/kg体重、K欠乏は5mEq/kg、Na欠乏は10mEq/kg程度とされる。
 本病態は、1型糖尿病発症時のほか、1型糖尿病患者で摂食不良でインスリン注射を中断した場合や、感染、重篤な全身性疾患、脳血管障害、心血管障害などを契機に起こる場合がほとんどである。注意すべきは2型糖尿病で、清涼飲料水によるケトアシドーシス(ソフトドリンクアシドーシス)が見られることがあるので、水分補給時には注意が必要である。
A 臨床症状
意識障害、呼吸異常、消化器症状、脱水症状を認め、呼気のケトン臭、クスマウル大呼吸が特徴的である。クスマウル大呼吸はアシドーシスに対する呼吸中枢の抑制とアシドーシスに対する代償性の刺激によって起こる大きく深い呼吸である。消化器症状は嘔吐、腹痛などであり、嘔吐は電解質異常を助長する。
B 治療
輸液とインスリン投与による脱水、高浸透圧、アシドーシスの補正を行う。
輸液量は最初の2~3時間で2〜3Lを補い、以後は速度を半分にして、尿量を見ながら輸液量を調節する。Na濃度が155mEq以上の場合に1/2生食を注入するが,NAが低下すれば通常の生食に戻す。
 ケトン体の合成を抑制するためにはインスリンの持続投与が必要であるが、現在は時間当たり5~10単位の速効性インスリンを投与する。
 急激な浸透圧低下は脳浮腫を起こし致命的となることがあるため、急激な血糖低下、浸透圧低下は避けるべきである。意識レベルの再増悪等により脳浮腫の存在が疑われたら緊急にCTやMRI検査を行い、マニトール投与を開始する。



・高血糖高浸透圧昏睡(HONK)
 HONKにおけるインスリン欠乏はDKAほど著しくなくケトン体は正常ないし軽度増加にとどまっており、脱水と高浸透圧が病態の中心である。脳神経系の細胞内脱水と循環虚脱による脳の酸素不足により意識障害がおこるとされ、その程度は血漿浸透圧と相関が高い。
 DKAに比べて血糖値は高く、通常血糖値は800mg/dl以上で、時には2000mg/dlになることもある。



@ 病態
2型糖尿病に生じる。インスリン欠乏はDKAに比べて相対的である。そのため脂肪分解がDKAほど進まず、したがってケトン体生成もDKAほど進行しない。原因として感染、高カロリー輸液、薬剤投与などのなんらかの誘発因子があることが多い。
 脱水による腎血流の低下がブドウ糖排泄を低下させ、さらに高血糖を増悪させる。高齢者の場合すでに存在している腎障害や口渇意識の低下が著しい高血糖と脱水につながるとされている。
 検査所見では著しい高血糖と高浸透圧(通常320~350mOsm/L以上)を認め、高浸透圧の程度に比して、BUNやNAも高値を示す。pHは7,3以上である。血漿浸透圧は2×(Na+K)+血糖値/18+BUN/2,8で求めることが可能である。
A 臨床症状
意識障害、脱水症状、血圧低下、消化器障害、循環器障害などを認める。
B 治療
基本的治療方針はDKAと同様である。しかし脱水の補正が中心であるためインスリン投与はDKAより少量でよい(時間当たり5単位以下)。多くは著名な脱水のため血圧は低下し循環虚脱の状態にあり、この状態を脱するまでは輸液として生理食塩水を用いる。

・低血糖
インスリンやSU薬による治療の合併症として低血糖がある。インスリン療法が確立した当時から、インスリンの有用性とともにその毒性が喚起されてきたが、未だ重症低血糖による死亡事故や中枢神経障害による永続的な機能障害の発生は完全に制圧されてはいない。
@ 病態
正常状態では、中枢神経系はそのエネルギーを100%ブドウ糖に依存しており、血糖値の低下に対しては様々な拮抗調節反応が備わっている。血糖値が80mg/dl付近まで低下すると、まずインスリンの分泌が抑制され、70mg/dl付近まで低下すると、グルカゴン、アドレナリンが分泌される。さらに60mg/dl以下まで低下すると、成長ホルモン、コルチゾルの分泌が起こる。
A 臨床症状
低血糖症状は通常neurogenicとneuroglycopenicに分けられる。Neurogenic症状は低血糖によって誘発された自律神経系の変化に基づく反応である。自律神経症状には自覚症状として不安、神経質、動悸亢進、異常知覚が、他覚所見として発汗、蒼白、低体温、頻脈、高血圧、不整脈、瞳孔拡大がある。これらの症状は血糖値が55mg/dl程度まで低下すると出現し、警告症状という。血糖値が50mg/dlを下回るとneuroglycopenic症状と呼ばれる中枢神経の機能低下による症状が出現する。中枢神経症状の自覚症状として、頭痛、かすみ目、一過性複視、異常知覚、空腹感、吐気、倦怠感、眠気、被刺激性、眩暈がある。また他覚所見として錯乱、奇異行動、発語困難、興奮、嗜眠、失語、失調、眼振、麻痺、痙攣、昏睡、浅呼吸、徐脈がみられる。
B 治療
意識が保持され経口摂取が可能な場合にはブドウ糖10~20gを経口摂取させ、症状が治まれば食事を取らせる。経口摂取が不可能な場合、同居者によるグルカゴン1rの筋注あるいは皮下注が有効である。
 医療機関では、50%のブドウ糖液20~40ml(小児は10ml)を静注、回復が十分でない場合は5%ブドウ糖液を点滴し、血糖値を100~200mg/dlに保つ。数時間以上昏睡が続いていた場合には脳浮腫の可能性があり、デキサメサゾンやグリセオールを開始する。
 
  ○慢性合併症
・糖尿病性壊疽
 好発部位は足趾、踵部、中足骨骨頭部の過重負荷が大きいところに多いが、足背部にも発生する。定期的な足のチェックとフォローが必要であり、またハイリスク患者の抽出、教育、指導と非潰瘍性足病変の治療が予防に重要である。ハイリスク患者の特徴と潰瘍危険因子は@罹病期間が長い(10年以上)、A男性、B血糖コントロール不良、C末梢神経障害、網膜症、腎障害合併、D末梢循環障害合併、E足潰瘍の既往、F足変形、G足部のROM制限、H爪変形などがある。PT時には壊疽の有無を確認しておく必要がある。
@ 糖尿病性足部潰瘍
患者の多くは、知覚低下により切傷、熱傷、靴づれに気付かず、これに感染が合併することで潰瘍、壊疽と進展する。血糖コントロール不良も少なからずこれに関与し、まれに骨髄炎、敗血症に至ることもある。発症・進展は下記のように種々の因子の複雑な相加・相乗効果で完成する。
  糖尿病性神経障害(知覚神経障害、運動神経障害、自律神経障害)
  末梢神経障害
  感染
  高血糖
A 虚血性壊疽(動脈閉塞性壊疽)
動脈閉塞性壊疽では、糖尿病合併の患者が多い。下肢の主幹動脈閉塞の病理所見は、粥状硬化と、血栓形成で、非糖尿病と異なることはない。しかし、糖尿病患者では、脛骨、腓骨、足背動脈両側が閉塞している場合が多く、非糖尿病患者の好発部位とは大いに異なる。
B シャルコー足(関節)
シャルコー足は神経障害を有する足に起こる骨と関節の破壊性変化、変形である。外傷等に引き続き急性期には片足に熱感、発赤、腫脹を認める。単純X線では初期には異常が見られず、骨シンチにて検出できる。蜂窩識炎との鑑別が重要であるが困難な症例もある。シャルコー足では、皮膚潰瘍は少なく、下肢挙上で腫脹が軽減することが特徴である。 
 治療は安静、免荷、固定が重要である。


・大血管障害
 糖尿病は脳血管障害や冠動脈疾患のリスクを高度に上昇させる。
@ 脳血管障害
脳血管障害の発生率は非糖尿病患者に比べると約2倍にも増加する。中でも脳梗塞が重要で、糖尿病における脳梗塞の特徴は中、小の梗塞、多発性梗塞が多いことである。また脳梗塞の各臨床病型の特徴から考えると、糖尿病はアテローム血栓性梗塞とラクナ梗塞の危険因子と考えられている。



 
A 冠動脈疾患
 糖尿病の合併症の多くは冠動脈疾患に基づく心血管系の異常、うっ血性心不全、高血圧、腎不全に関連している。糖尿病は冠動脈疾患の独立した危険因子であり、冠動脈疾患は成人糖尿病患者の死亡原因第1位を占め、非糖尿病患者の約3倍といわれている。
 糖尿病に合併した冠動脈疾患の特徴として@無痛性発症の心筋梗塞が多い、A心筋梗塞急性期のポンプ失調症が多く、死亡率が高い、B冠動脈疾患の長期予後は不良である、C無症候性心筋虚血が多い、Dびまん性・末梢冠動脈病変が多く、しばしば冠血行再建が困難であることなどが挙げられる。

・高脂血症
脂質には、コレステロール、トリグリセリド、リン脂質、遊離脂肪酸などがある。脂質は疎水性の物質であり両親媒性のタンパク質と結合することにより水に溶けやすい形となり血中を循環する。この脂質とタンパク質の複合体をリポタンパクといい、脂質の単独、あるいは複数の増加を高脂血症という。
@ガイドライン 
日本動脈硬化学会のガイドラインに従い、採血は早朝空腹時に測定し、前日のアルコール摂取を禁止する。




図ベッドサイド 62

A分類
i)原発性高脂血症
 遺伝子以上のものが多いが、原因不明のものも含まれる。



ii)二次性高脂血症
  高脂血症の全体の40%を占める。基礎疾患として糖尿病、薬物(アルコール、ピル、ステロイドホルモン)、甲状腺機能低下症、腎疾患が多い。
・表現型による高脂血症のWHO分類
  血清リポタンパク分画の分布異常に基づく病型分類。臨床的にはUa型、Ub型、W型が圧倒的に多い。


@臨床症状
 ・黄色腫
 ・肝腫:T、X型に多い
 ・粥状動脈硬化:Ua、Ub、V、W,X型で進行しやすい。
A糖尿病に合併する高脂血症
糖尿病に合併する高脂血症は、IDDMとNIDDMによってその発生機序が大きく異なる。IDDMではインスリンの絶対的不足によるリポタンパクリパーゼ活性の不活化に基づく外因性リポタンパクであるカイロミクロンの異化障害であり、一方NIDDMでは肝における超低密度リポタンパク(VLDL)の合成亢進が高脂血症の本態である。
B治療
治療の主体は血糖値のコントロール、食事・運動療法である。食事療法では適切なエネルギー摂取を行い、適正体重を目指す。高コレステロール血症のある場合には、脂肪摂取の制限、P/S(多価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸)比の是正、コレステロール摂取量の制限を行う。高トリグリセリド血症がある場合、砂糖や果糖の摂取制限を行う。運動負荷は30分程度の歩行が推奨されており、軽く汗ばむ程度がよい。

 ・高血圧
  糖尿病患者の約40~60%は最終的に高血圧になるとされている。糖尿病と高血圧は互いに独立した心血管系疾患のリスクであり、両者の合併で死亡率は、非糖尿病患者の6~7倍に達する。高血圧の治療は単に血圧を下げるだけでなく、脳血管障害や、心疾患などの大血管障害による死亡率を減少させ糖尿病腎症などの細小血管障害を予防することにある。
@成因は高血糖により体内Na量が増加し、循環血漿量が増加し血圧が上昇すると言われている。さらには肥満者が多く、交感神経系の緊張も血圧の上昇に関与している。
A特徴
糖尿病患者では罹患早期より動脈硬化が進行しやすく、脳血管障害や心疾患が高頻度にみられる。また夜間睡眠中の血圧が低下しないnon-dipperが多い。糖尿病神経障害が進行すると起立性低血圧が多くなるが、臥位高血圧のときがあり注意を要する。
 このような理由で、糖尿病患者の血圧測定に際しては、座位のみならず、臥位や立位でも測定するのが望ましい。
B臨床症状
脳神経症状:頭痛,めまい,しびれ,耳鳴り,不眠,いらつきなど
心症状  :動悸,息切れ,胸部圧迫症状など
腎症状  :浮腫,頻尿,夜間尿など
その他  :肩こり,鼻血など
C治療
生活改善・運動・薬物療法を行う。
生活面では、禁酒、禁煙、ストレスを避ける、冷所をさける。運動は有酸素で最大酸素摂取量の50~60%の強度で1日30分以上行う。


糖尿病の理学的所見
 ・全身所見
@ 肥満
肥満の程度をBMIにて判断
A 皮膚
a) 糖尿病水疱
糖尿病皮膚病変の一種。糖尿病神経障害を有する例の足縁、足趾、下腿前面に無症状で無色あるいは出血性の水疱として突然出現する。糖尿病壊疽の重要なサインである。
b) 前脛骨部色素斑
糖尿病皮膚病変の一種で下腿脛骨部に出現する類円系の色素斑。
    C)糖尿病リポイド類壊死症
     下腿伸側、腕、手に後発する皮膚の委縮斑で毛細血管拡張を伴う
    d)黒皮症
      インスリン受容体異常、もしくはインスリン受容体抗体を有する例ではインスリン抵抗性があり、高インスリン血症により皮膚の上皮細胞が刺激され黒皮症を呈する。
    e)糖尿病浮腫性硬化症
      上背部、肩、頚部に盤状の皮膚硬化を認める
    f)黄色腫
     i)発疹性黄色腫
      糖尿病コントロールが極端に悪化し、高カイロミクロン血症を呈した際にみられる。大きさは1~6mmで黄色、周辺部は発赤している。
     ii)手掌線状黄色腫
高脂血症を合併する際には特徴的な手掌の皮膚溝に沿って黄色の線状にみられる黄色腫を呈する。
     iii)腱黄色腫
      アキレス腱、手背、足背などの腱に腫大した黄色腫を認めた場合家族性高コレステロール血症を疑う。
    g)インスリン皮下脂肪肥大症・インスリン皮下脂肪委縮症
     長期間インスリンを皮下注射している患者において、その注射部位の皮下脂肪が肥大して腫瘤が形成することがある。このような場合、その部位にインスリン注射をさらに行うとインスリンの吸収が不規則であるため、血糖値が不安定となることがある。
      インスリン皮下脂肪委縮症とはインスリンを長期間一定部位に注射した際に起こる皮下脂肪の限局的な委縮である。
B 全脱毛・白斑
全脱毛は1型糖尿病にまれに合併する所見で、他の脱毛と異なり、眉毛まで脱落するのが特徴である。白斑も1型糖尿病にまれにみられ、顔面、手指などに出現する。これらは自己免疫的機序による障害が原因と考えられている。

局所的所見
1. 頭頚部
・眼底検査(糖尿病性網膜症)
・甲状腺腫の有無
・耳下腺の腫脹 
  肥満を伴った糖尿病の特徴
・脳神経障害の有無
 眼球運動以上がみられる場合がある
2. 胸部心血管系
臥位および立位となった際の血圧をそれぞれ測定し、起立性低血圧の有無をみる。臥位と立位の血圧の差が30oHg以上あれば陽性といえる。
3. 腹部
重症糖尿病が長時間続いた結果、腹壁の筋緊張が著しく低下している場合がある。脂肪肝をみるために肝の腫大の有無、膵胆道系の腫瘍をみるために腹部の腫瘤性病変の有無を確認する必要がある。
   4,四肢
@ 脈拍の触知と聴診
四肢の血行、特に下肢の動脈の拍動を確認する意味で必ず足背動脈、後脛骨動脈、膝窩動脈及び大腿動脈の拍動を触診する。
A 運動機能
糖尿病性神経障害による筋力低下がみられる。
B 腱反射
神経障害の有無をみる目的でアキレス腱反射、膝蓋腱反射をみる。
C 知覚検査
糖尿病神経障害は下肢に強く出現するため、特に下肢の異常知覚の有無を検査する。

i) 振動覚
糖尿病神経障害の場合、振動覚の低下を認める。
ii) 異常知覚
足底部にのりが張り付いている感覚として訴えることが多い。異常知覚には痛み、しびれ感がある。これらの症状は無感覚もしくは疼痛の知覚障害を呈するようになる。

D 手指のDupuytren拘縮、及びlimited joint mobility
Dupuytren拘縮は第4、5指に生じることが多い。
関節の可動域制限によって両手を合わせても、左右の指がぴったりくっつかない場合をlimited joint mobilityという。
E 四肢末端
障害の進んだ糖尿病患者では両足の潰瘍もしくは壊疽を有しても症状を訴えないことが多い。皮膚の色調に注意し、発赤、腫腸がみられた際には、皮膚組織の炎症あるいは骨の異常を考える。


○糖尿病の病型
 ・1型糖尿病
   1型糖尿病はインスリン依存型糖尿病(insulin-dependent diabetes mellitus;IDDM)とも呼ばれ小児ないし若年者に多い。IDDMはインスリン産生細胞である膵島β細胞の選択的破壊により発症する自己免疫疾患であり、複数のβ細胞自己抗原に対するT細胞の反応により引き起こされる。一般に健常者においては免疫学的自己寛容機構により膵島β細胞に対する自己反応性T細胞は胸腺で除去され、末梢血液中に出現することはほとんどない。しかしこれらの免疫制御機構が破綻すると、膵島β細胞反応性T細胞が活性化され膵島β細胞の障害が進み1型糖尿病の発症にいたる。発症が急激で高度の高血糖とケトアシドーシスの状態になりやすい。また1型糖尿病はその病態によって緩徐進行1型糖尿病、劇症1型糖尿病、小児1型糖尿病に分類される。

@ 緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)
1型糖尿病の亜型の1つに位置づけられる。SPIDDMは「当初は食事療法や経口血糖降下薬で治療が可能な2型糖尿病の病態を呈するが膵島自己抗体が持続陽性で緩徐にインスリン分泌が低下し、最終的にインスリン依存状態となる糖尿病と定義される。」臨床においては、SU薬などによって治療されると、インスリン依存状態へ不可逆的に進行し、重篤な合併症をまねきやすいこと、正しい診断に基づいて、早期にインターベンションができれば、インスリン依存状態まで進行させず、血糖コントロールが容易に行えることが重要である。糖尿病発症より3~6か月以上インスリン療法を必要としない糖尿病でGAD抗体が陽性かつ、進行性の内因性インスリン分泌低下が認められればSPPIDDMと診断される。GAD抗体価が10U/ml以上の場合にはSU薬は使用せず、血糖コントロールにはインスリンを用いる。10未満の場合には慎重に経過を観察する。

A 劇症1型糖尿病
劇症1型糖尿病は、「非常に急速でほぼ完全な膵β細胞破壊の結果生じる糖尿病」と定義される。急性1型糖尿病の約20%を占める。診断には日本糖尿病学会のスクリーニング検査と劇症1型糖尿病診断基準(表1)を用いる。その発症には遺伝因子とウイルスなどの環境因子の影響が示唆されているが未だ不明な点は多い。治療はインスリンを用いた血糖コントロールがおもである。
 ・スクリーニング基準
  1.糖尿病症状発現後1週間以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る。
   2.初診時の血糖値が288mg/dl(16,0mmol/l)以上である。



B 小児1型糖尿病
小児1型糖尿病の最大の特徴は発症時期が早く、患者がこどもであることである。血糖コントロールに用いるインスリン注射に付きまとう恐怖心や病気の不安を和らげる精神的フォローも重要になる。治療は他の病型と同様にインスリン補充療法・食事療法・運動療法は柱となる。


・2型糖尿病
 2型糖尿病はインスリン非依存型糖尿病(non-insulin-dependent diabetes mellitus:NIDDM)と呼ばれる。インスリン分泌低下を主体とするものとインスリン抗体性主体でこれにインスリンの相対的不足を伴うものがある。遺伝的素因が大きく関与しており家系内血縁者にしばしば糖尿病が認められる。40歳以上で発症することが多く、その発症率は約10人に1人である。日本人は欧米人に比べインスリン分泌予備能が低いため、わずかなインスリン抵抗性の増加でも2型糖尿病を発症しやすいのが特徴である。
 インスリン抵抗性は不適切な食習慣、肥満、運動不足、ストレスにより助長されるため、生活習慣を改善させることにより発症が一部予防でき、治療効果にも好影響を与える。

・症候性(二次性)糖尿病
 特定の疾患に続発して二次的に糖尿病が発症する病態である。主な原疾患としては膵疾患(慢性膵園、膵切除後)、ホルモン分泌異常(Cushing症候群、褐色細胞腫、甲状腺機能亢進症)、薬物(副腎皮質ホルモン)などである。


○糖尿病における薬物療法
 インスリン非依存状態で十分な食事・運動療法を2〜3か月間行った後も、良好な血糖コントロールが得られなかった場合、経口血糖下降薬の適応となる。通常Hb??7%を超えた状態が続けば傾向血糖下降薬の投与を開始する。インスリン治療を選択してもよいが患者の心理的抵抗を考慮すれば経口血糖下降薬より開始するのが一般的である。

 ・スルフォニルウレア尿素(SU)薬
  現在日本ではグリベンクラミドやグリメピリドなどのSU薬が主にしようされている。SU薬は膵ランゲルハンス島β細胞からのインスリン分泌を促進させる作用を持つ。年齢、体重を問わず第一選択薬として有用である。
主な使用目的は、HbA??や空腹時血糖値の下降である。しかし効果がつよいために低血糖などを生じ死亡する症例も報告されているため使用には十分な注意が必要である。



 ・ビグアナイド薬(BG)
  肝臓からのグルコース放出の抑制および筋肉を中心とした末梢組織でのインスリン感受性を高める作用や体重増加なしで、TGやLDLコレステロールをさげる。肥満患者にビグアナイド薬治療を行うと大血管症や死亡を抑制できたというエビデンスがUKPDSにある
     *UKPDS:United Kingdom Prospective Diabetes Study
   
 ・α‐グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
  直接的な血糖降下作用はなく、多糖類の分解を抑制し、糖質の吸収を遅らせることにより食後の高血糖を是正する。

 ・チアゾリジン薬
  末梢組織でのインスリン感受性を高め、肝臓からのグルコース放出を抑制する。血糖改善効果はSU薬と同等以上とされている。女性、肥満、高インスリン血症のある場合には、薬剤の効果は高い。TGを下げ、HDLコレステロールを上昇させる。動脈硬化を抑制し、大血管症の2次予防のエビデンスがある。副作用として体液貯留と体重増加、浮腫、心不全が挙げられ注意を要する。

 ・速効型インスリン分泌促進薬
  SU薬と同様の作用機序でインスリン分泌を促進するが、効果が速やかに起こり、また短時間で消失する。血糖改善効果はSU約程大きくないが、食後の高血糖に良い適応である。頻度は低いものの副作用の低血糖には注意が必要である。

*血糖コントロールが不十分な場合の対応
 食事・運動療法の徹底を図り、さらに必要であれば作用機序の異なる経口薬を追加するか、インスリンへの切り替え、または併用する。以下に示すのは効果があるとされている経口薬の組み合わせ例である。
   SU薬+BG薬
   SU+α-GI
   SU薬+チアゾリジン薬
   α-GI+ビグアナイド薬
   α-GI+BG
   α-GI+速効型インスリン分泌

*経口血糖下降薬が適応とならない場合
  11型糖尿病
  2糖尿病合併妊娠
  3糖尿病性昏睡
  4重症感染症
  5全身管理が必要な外科手術
   これらの5項目はインスリンの絶対的適応であり、経口血糖下降薬による治療を行ってはならない。




○インスリン療法
・インスリンが成体に与える影響
 インスリンは膵臓のランゲルハンス島β細胞で産生されるホルモンである。インスリンはグルコースやその他の栄養素の貯槽あるいは利用、および血糖値の恒常性を保つ上で最も重要なホルモンである。食物を摂取した際には血中のインスリン濃度は上昇し、逆に空腹時には減少する。インスリンは糖、アミノ酸、脂肪酸などの細胞内利用や、貯蔵にかかわる輸送機構や酵素を活性化させ、生じる糖、アミノ酸、蛋白質の分解を含めた異化過程を抑制する。
 

@ 糖代謝への作用
インスリンの最も 重要な標的細胞は肝・骨格筋である。骨格筋は量が多く末梢でのグルコース利用の主たる場所である。インスリン注射により筋のグルコースの取り込みが増え、血糖は速やかに低下する。肝臓におけるグルコースの生産はインスリンにより抑制され、これは空腹時血糖値の設定に大きく貢献する。
A 脂肪酸代謝への影響
インスリンの最も重要な標的細胞は脂肪組織、肝臓である。健常者では空腹時でも血中の遊離脂肪酸は低く抑えられているが、インスリン欠乏状態では遊離脂肪酸濃度が上昇する。またインスリンを注射すると血中の遊離脂肪酸濃度が減少する。これらはインスリンが低濃度でトリグリセリドの分解を抑制するために起こる。さらに高濃度のインスリンは脂肪酸の合成を促進する。インスリンはまた肝臓において遊離脂肪酸からのケトン体生成を抑制する。

B アミノ酸代謝への影響
インスリンの最も重要な標的組織は骨格筋・肝臓である。インスリン欠乏状態では蛋白質合成は低下し、蛋白質の分解が進んでいるが、インスリンはこれらを正常化する。インスリンはまたDNA合成や細胞の増殖、分化、成長などを促進する。


・インスリン療法の適応
 絶対的適応
 1型糖尿病(ほとんどすべて)
 急性合併症時
 2型糖尿病(食事・運動療法・経口血糖降下薬で適切なコントロールができない場合)
 糖尿病性昏睡
  高血糖高浸透圧昏睡
 乳酸アシドーシス
  糖尿病ケトアシドーシス
 重篤な感染症
 重度の外傷
 侵襲の大きい手術
 妊娠合併例


・インスリン処方の実際
@ 一般的処方
健常者のインスリン分泌は、食事による血糖値上昇にあわせた追加インスリン分泌と夜間などの血糖値が安定しているときに分泌されている基礎インスリン分泌の2相に分けられる。2型糖尿病の多くでは基礎インスリン分泌が比較的保持され、追加インスリンが遅延、低下している。そのため主に追加インスリンの補償を目的とした混合型インスリンの朝夕2回/日注射が一般的である。

A 強化インスリン療法
 超速効型や速効型などの作用時間の短いインスリンを一日に数回(2~4回が一般的)注射する方法である。1型糖尿病や重症例の2型糖尿 病では基礎および追加のインスリン分泌が障害されており両者とも補償する必要がある。そのため血糖自己測定(SMBG)と組み合わせて血糖値を治療内容にフィードバックすることによりいっそう良好な血糖値コントロールを可能にする。インスリン頻回注射法や持続皮下インスリン注射法がある。
 しかし強化インスリン療法には種々の問題点も指摘されている。
   ・従来手法に比べ手技が煩雑
   ・重症低血糖をきたしやすい
   ・体重が増加しやすい
    


・インスリンの副作用
インスリン療法の副作用として主に低血糖とインスリンアレルギーが挙げられる。
@ 低血糖
インスリン療法による厳格な血糖コントロールの有用性が指摘されているが、これにより低血糖のリスクは数倍増す。繰り返す低血糖や昏睡に至るような重症低血糖ほ中枢神経に悪影響を及ぼし生命をもおびやかす。
・特徴
  1,肝臓からの糖放出が抑制される
  2,インスリンの残存により末梢でのケトン体利用が亢進されるため、脳での使用量が減少し中枢神経障害に至る。
  3,グルカゴン分泌反応が障害される
  4,自律神経障害を伴っている場合エピネフィリン反応が低下している。

・症状
i)血糖値が55mg/dl前後以下になると、発汗、振戦、動悸などのエピネフィリン分泌による警告症状が出現する。エピネフィリン反応が低下している場合、いきなり中枢神経症状が出現する。

ii)インスリンアレルギー
局所症状としてインスリン注射直後に注射部位に熱感、蕁麻疹様皮疹(固い硬結を伴うこともある)が出現する即時型反応と4~8時間後の著名な硬結、紅斑、かゆみが出現する後期相反応がある。
 また全身性症状として全身性の蕁麻疹、かゆみ、血管性浮腫、発疹、顔面紅潮、動悸、気管支痙攣、関節痛、筋痛、発熱、頭痛、胃腸症状などを呈する。重症の場合急性アナフィラキシーショックに陥ることもある。




・インスリンの投与法
@ シリンジ
バイアルから専用のシリンジにてインスリンの必要量を吸引し投与する方法。皮下注射、静脈内投与などに用いられる。



A ペン
ペン型注射器にカートリッジを装着するタイプとペン型の使い捨てタイプがある。カートリッジ式の場合カートリッジと使用する注射器の適応に注意する。バイアルからインスリンを吸引する必要がなく、携帯に便利であり、針も細く痛みがあまりないなどの利点がある。最近はこのタイプが主流。特にインスリン頻回投与法などに適している。



B ポンプ
腹壁皮下に留置した翼状針を用いて、体外のインスリン注入器(インスリンポンプ)より超高速型、あるいは速効型インスリン製剤を24時間持続的に投与する。インスリン持続皮下注入法という。ラインがあるためPT時とトランスファーなどには特に注意が必要となる。



C 人口膵島
内因性のインスリン分泌が高度に障害されている糖尿病患者において、長期間良好な血糖コントロールを得ようと開発されつつあるが、現在研究段階。

D 連続血糖モニタリング(CBGM)
現在、米国では皮下組織に刺入したモニター針により24時間の連続的な血糖コントロール可能となっている。日本でも使用例が増えており、思わぬ時刻の低血糖・高血糖がチェックでき非常に有用である。



糖尿病と運動療法
 ・糖尿病に及ぼす運動の影響
   前述のとおり糖尿病治療の基本は食事療法、薬物療法、そして運動療法である。運動は長い間糖尿病の治療として用いられており、糖尿病患者の臨床的管理に運動が有益であることは間違いないとされている。
1) 糖代謝の改善
 筋活動のエネルギー源の大半は糖質によってまかなわれている。全身の糖質の約50%は筋内にグリコーゲンとして含まれ、これが活動のエネルギー源となり運動により消費される。このため、運動によって体内での糖代謝は活発となり、糖質の利用は増大する。さらに肝臓から筋への糖質供給も盛んに行われるようになる。運動によって消費された糖質は運動後にも補充されるため、運動効果による糖利用の亢進は運動終了後にも及ぶ。
 また、運動は筋組織などの末梢組織でのインスリンレセプターにも影響を与えてその数と感受性を増大させ、さらに糖代謝にかかわる酵素群の活性を高める。このようにして糖質が十分に利用される環境が作られる。

2) ウェイトコントロールと脂質代謝効果
 糖質の消費が多いのは脳や骨格筋であり脂肪組織では極めて低い。すなわち肥満は糖代謝に悪影響を与えることになる。運動療法により肥満が改善され骨格筋量が増えれば糖代謝の面から見れば有利になる。
 また運動は脂質代謝においても有用とされている。運動によりリポ蛋白リパーゼ活性が高められ、動脈硬化のリスクファクターであるVLDLは低下し、逆にHDLは増加してくる。このような

3) 心肺機能への効果
 臨床においては運動が冠動脈の副血行路を増大させるため、狭心症や心筋梗塞などの二次的合併症のリスクを軽減できる。

4) 筋力・筋持久力の増強効果
 筋の廃用性萎縮は糖尿病患者の代謝の悪化にさらに拍車をかけることになる。これを防止するためにも運動は欠かせない。筋肥大は代謝の改善につながる。また2)で述べたウェイトコントロールにおいても筋は重要になる。食事のみの減量でも体重は落ちるが同時に筋量も低下し体力自体の低下になる。

5) 脳・神経系への効果
 糖尿病に関わらず多くの疾病ではストレスは大敵とされる。運動によって脳に賦活作用を与えストレスがたまらないようにする。
 また持続的な運動は成長ホルモンやエピネフリン、ノンエピネフリンなどの抗インスリンホルモンの分泌も安定させる。これは糖代謝に好影響を与え、血圧コントロールにも有用である。


・運動療法の適応と禁忌
 ・適応
  明らかな合併症がなく、著名な血糖亢進(空腹時血糖値250mg/dl以上)を認めない症例が適応であり、食事療法との併用が第一選択となる。また微量アルブミン尿や尿蛋白出没症例、眼底出血の危険性のない単純網膜症例、明らかな自律神経障害を認めない軽度の糖尿病性末梢神経障害(痛覚の低下、消失例では下肢の運動は避ける)を有する症例が相対的適応となる。その際、食事療法を徹底的に指導し、血糖コントロール(必要に応じて血糖降下薬、インスリン治療も併用)が良好になってから運動療法を始める。
 ・禁忌
 インスリン欠乏状態が著しい場合(高血糖を伴い、尿中ケトン体が陽性)、特に1型糖尿病においては、運動によりインスリン拮抗ホルモンの分泌が高まり、肝でのケトン体生産の増大のみならず、骨格筋でのケトン体利用の低下もきたし、一層ケトーシスが助長される。肝糖放出も亢進し、代謝状態はますます悪化の一途をたどる。したがってインスリン欠乏状態の患者には運動療法は絶対的近禁忌である。また出血あるいは出血のおそれのある増殖前網膜症例、腎症のためにネフローゼ症候群や腎不全に至った症例、重篤な心血管障害(心筋梗塞、不安定狭心症、一過性脳虚血発作など)を有する症例、急性感染症合併症例なども、運動療法の禁忌ないし適応外であり、ADLにおける身体活動も制限されるべきである。 

積極的な運動を進めるべき例
 NIDDM(代謝異常が経度、合併症がないもの)
1) 注意して進めていくべき例
 肥満の著しいNIDDM、高齢者
 著名な代謝異常を有するNIDDM、IDDM
 糖尿病性末梢性神経障害
 単純性網膜症や初期の腎症があるもの
 軽度な高血圧、動脈硬化性血管障害合併症例
2) 禁忌とすべきもの
 ケトアシドーシス(インスリンが欠乏状態にある)
 重篤な血管障害合併例
 出血の危険のある網膜症
 進行した腎症(腎不全)例など
 合併した感染症がまだ活動期のもの



○運動療法に必要な評価
 @メディカルチェック
  運動器疾患、中枢神経系疾患の理学療法とどうように、運動を開始する前に、他部門からの情報を十分に把握する必要がある。特に糖尿病の種類、糖・脂質代謝異常のコントロール状態、合併症の有無・程度に関するチェックが重要になる。


A 問診・患者観察・基本評価
   家族歴、現病歴、既往歴、運動歴、体重、自覚症状、身体所見、運動機能の把握、肺機能検査ほか、糖尿病に特徴的なものとして、生活習慣や摂取エネルギー量と消費エネルギー量の関係などがある。
○運動の種類
 糖尿病治療の中核をなすのは有酸素運動である。運動種目としては散歩(ウォーキング)、ジョギング、自転車エルゴメーター、ラジオ体操、水泳など全身を使った有酸素運動が勧められている。
・レジスタンス運動
 レジスタンス運動とは無酸素運動とは異なり、低負荷、高頻度の筋力トレーニングであり、ダンベル、リフティングやローイングに代表される力み呼吸を止めて循環系への負荷を増やすようなValsalva呼吸を行わない運動である。歩行を中心とした有酸素運動のみではインスリン抵抗性が改善しなかった症例で、レジスタンス運動を併用したところ、著名な改善効果があったという報告がある。

・運動処方
 運動療法は一日の消費エネルギーの1割程度を目標と目安とする。一日の消費エネルギーは、生活行動表、あるいはカロリー・カウンターから算出する。
 運動強度は、最大酸素摂取量を基準とする方法が正確だが、日常的にこれを測定するのは困難であり、酸素消費量と相関の高い心拍数を目安とするのが一般的である。最大酸素摂取量の50~60%(50~60%VO?max)に相当する運動が適当と考えられ、これに適応する心拍数は最大心拍数の60~70%程度である。実際の運動は50%VO?maxに相当する運動(約300kcal/時)を1日20~30分、週に3~5回行うのがよい。



○食事療法
 ・目的 
  食事療法は糖尿病治療の三本柱の一つとして非常に重要な役割をもっている。
 糖尿病の食事療法の目的は、患者の代謝状態をできる限り正常に近づけて合併症の発症・進展を防ぐことにある。患者の大部分を占める2型糖尿病ではインスリン分泌不全とインスリン抵抗性が病態の根底にあるので、食事療法もこれを是正する内容でなければならない。さらに、大血管障害(動脈硬化)に対しては蛋白制限に重点を置いた食事療法がもとめられる。すなわち、単に血糖上昇への影響のみならず、代謝全般に及ぼす影響を踏まえた適切な食事療法を行うことが必要である。


 ・日本人の食の変化
  日本人における過去40年間での栄養摂取量の変遷と糖尿病受療率をみると、総エネルギーと炭水化物が減少し脂肪の摂取量が増加してきており、この変化と糖尿病の増加が軌を一つにしている。従来の糖尿病食は炭水化物の制限に重点を置きすぎていた傾向があり相対的に高蛋白、高脂肪食となっていた。しかし近年、さまざまな観点から、糖尿病食事療法のないようを科学的に再検討する必要性が認識されている。



食事療法の基本
 標準体重を算出し、標準体重1kg当たり何kcalのエネルギーを摂取できるかを肥満度や運動量などより決め、一日の摂取カロリーが決定される。入院中、外来を問わず、医師の処方した糖尿病食の具体的な摂取方法について栄養士による指導を受けさせるが、外来の場合、三日間程度食事内容を調査し、それを是正する形で指導するのがよいとされている。

 標準体重の決定(身長・体重の算定)
  成人
@ Broca・桂の変法:{身長(p)−100}×0.9kg(身長>150cm)
       :{身長(p)−105}kg  (身長≧150p) 

A BMI(Body mass index):身長(m)2×22kg
  小児
     身長・体重表より算出

 一日摂取エネルギーの決定(肥満度・運動量の算定)
  成人:標準体重×体重1kg当たりの摂取エネルギー
     肥満者・高齢者     :25~30kcal/kg
     軽度肥満・事務的労働者 :30~33kcal/s
     普通あるいは中労働者  :33~35kcal/kg
     重労働者・若年者    :35~40kcal/kg
  妊娠中
     妊娠前半:標準体重×30+150kcal
     妊娠後半:標準体重×30+350kcal
     授乳期 :標準体重×30+600kcal
      (肥満者には、1200kcal基礎食で一日4~6回の分食)
  小児
     年齢(歳)    体重(kg)   摂取エネルギー(kcal/day)
       2     12~14      1200
       4     16~18      1400
       6     20~22      1600
       8     24~28      1800
       10     30~34      2000
       12     38~48      2200
       14     48~50      2400(女子は2200)



・食事療法の原則
@ 適正な総エネルギー量の食事
食事の量の問題である。標準体重を保ち、社会生活をおくる上で必要最小限のエネルギー量とする。肥満の是正が特に重要とされる。
A バランスの良い食事
炭水化物、蛋白質、脂質の三大栄養素の適正配分と同時にビタミン・ミネラルといった微量栄養素や食物繊維が不足しないようにすることが必要である。
B 合併症を防ぐための食事
血糖コントロールに役立つだけでなく、高血圧や高脂血症あるいは腎症予防にも通じる食事であることが期待される。そのためには、栄養素の量だけでなく質にも注意する必要がある。
C 規則正しい食事時間
薬物療法を行っている場合、低血糖防止のためにも規則正しい生活が重要である。また食後の高血糖を抑えるには、よく噛んでゆっくり食べることが大切である。一度にたくさん食べるような食事は避ける必要がある。
D 生涯にわたってつづけられる食事
何より大切なのは続けられる食事療法であることである。患者にとって食べる楽しみを持ちつつ、養生のできる、無理のないものでなければ食事療法を続けることは難しい。


栄養素別の注意点
@ 糖質
 糖質の摂取はその量と質に注意する。摂取エネルギーの50~60%を炭水化物から摂取することが日米の糖尿病患者の食事構成として進められているが、これは伝統的な日本食の比率に近い。さらに同じ食事を与えても食物繊維が豊富でGlycemic Indexの低い食事が理想である。 
 さらに同じ炭水化物でも、単純糖類と複合糖類とでは糖・脂質代謝に対する影響は大きく異なり、複合糖類の形体での吸収が良い。単純糖類の過剰摂取は糖・脂質代謝異常を引き起こすとされている。

A 蛋白質
蛋白質の摂取は腎症に対する影響を十分に考慮する必要がある。糖尿病性腎症に対しては多くの場合、蛋白制限が行われる。
 しかし、蛋白質制限下で十分なエネルギー摂取を確保しようとすると、比較的高脂肪食となる。このことが糖・脂質代謝に悪影響を与えることを考慮して献立を作成する必要がある。現在日本では1.0~1.2g/体重が適正とされている。

B 脂肪
脂肪摂取の多いものから耐糖能障害ならびに糖尿病発症率が優位に高いことが、疫学的調査によって明らかにされている。脂肪からのエネルギー摂取比は25%を超えないように勧告されている。近年日本の若者の食が欧米化するにつれ脂肪摂取量が増加していることが危惧されている。 
 脂肪摂取量の制限(エネルギー比25%以下)、飽和脂肪酸(動物性)・一過不飽和脂肪酸(植物性)・多価不飽和脂肪酸(魚類)の比率を1:1.5:1にするなどの改善が必要である。

C ビタミン・ミネラル
三大栄養素とエネルギー摂取にのみ目を向けていると、ビタミンやミネラルの摂取量に不足をきたすことがあり注意がひつようである。
 糖尿病では尿中カルシウム排泄量が増大するためカルシウムバランスが負に傾きやすい。実際、糖尿病患者では骨減少を」きたす率が非糖尿病に対し3倍も高いとされている。マグネシウムやその他のミネラル、微量元素についても、不足しないように注意が必要である。

D アルコール類
アルコール1gは約7kcalのエネルギーの燃焼エネルギーを有する。糖尿病患者のアルコール摂取はしばしば食事療法の乱れる原因となるため禁酒が望ましいが、一定の条件下で許可されることがある。アルコールを追加しても他の栄養素を減じてはいけない。摂取量は一日2単位までとする。アルコールは肝の糖新生を抑制し低血糖の誘発因子となるため、薬物療法中の糖尿病患者では特に注意が必要である。


 
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