・糖尿病診断に用いられる検査
1.血糖値検査
① 随時血糖値
空腹時や食後などというように時間を問わずに採決したものを随時血糖値という
② 空腹時血糖値(Fasting plasma glucose)
10時間以上絶食させた後の血糖値をさす。臨床的には朝食前の血糖値を採用する。一般に126mg/dl以上を糖尿病型とする。
③ 経口ブトウ糖負荷試験(OGTT)
OGTTは、75gのグルコースを負荷し、その後の糖の処理状況を調べる検査である。軽症の糖代謝異常と調べる最も鋭敏な試験方法である。OGTT負荷後1時間の血糖値が180mg/dl以上の場合、正常型であっても糖尿病に移行する確率が高くなる。OGTT時にはインスリン量の測定も同時に行われOGTT負荷前(空腹時)と負荷後2時間のインスリン値からインスリン過分泌の有無が判断できインスリン抵抗性の可能性が予測できる。また30分値より、初期インスリン追加分泌の量や、遅延型か否かの把握も可能である。したがってOGTTより、病態の把握、治療方針の決定、使用薬剤が判断されるようになる。
2.インスリン分泌能
尿中Cペプチド(CPR)と血中インスリン値(IRI)は、インスリンの分泌状態や分泌予備能の評価に有用である。
① 尿中Cペプチド排泄量(正常値:50~100μ/day)
インスリン分泌能を評価する指標として、CRPの排泄量を参考にする。
CRPは膵島β細胞からインスリンと同数分泌されるため、内因性インスリン量を間接的に測定するときに有用である。
② 血中インスリン値(空腹時の正常値:3~15μU/ml)
空腹時の血中IRI値は起訴分泌を反映し、食後やブドウ糖負荷後の上昇は追加分泌を反映する。早朝空腹時の血中インスリン濃度が15μU/ml以上の場合は高インスリン血症と考え、インスリン抵抗性の存在が考えられる。またほとんどの2型糖尿病患者は糖負荷後のインスリン初期分泌反応が鈍くなっているが、このインスリン分泌能の障害を把握する指標としてインスリン初期分泌指数(insulinogenic index)が有用である。すなわち、インスリン初期分泌指数=ΔIRI(30分)μU/ml÷ΔPG(30分)mg/dl<0,4(75gOGTT時)で求められ、糖尿病患者では0.4以下となる。
③ インスリン抵抗性
インスリン抵抗性とは一般的には、血中のインスリン濃度に見合ったインスリン作用が筋・肝などの組織で十分に得られない状態をいう。インスリン抵抗性の簡便な指標の一つとして早朝空腹時の血中インスリン値とグルコース値より計算されるHOMA-IRがある。
HOMA-IR=IRI(μU/ml)×空腹時血糖値(mg/dl)÷405で求められた値が、1,6以下の場合は正常。2,5以上の場合はインスリン抵抗性があると判断する。しかしこの式を成立させるためには空腹時血糖値140mg/dl以下を対象としなければならず、仮に140mg/dlを超えた状態で測定しても、その値はインスリン抵抗性を示しているのではなく、むしろインスリン分泌能が低下している状態を示している。
2、その他のコントロール指標
①体重
肥満はインスリン感受性を低下させインスリン需要量の増加を認めることから、患者の適正体重に改善し維持していかなければならない。また肥満はメタボリックシンドロームを引き起こす基礎をなしている。
② 血圧
血管系疾患のリスクが相乗的に高まることから、血圧管理は厳密に行わなければならない。高血圧合併例の降圧目標は130/85mmHg未満に設定されている。さらに、糖尿病性腎症を合併している場合は125/75mmHg未満と設定されており、腎症の進行予防には血圧管理が極めて重要である。
③ 血清脂質
高脂血症は心血管系疾患の主要な危険因子であり、糖尿病があるだけで3つの冠危険因子を持つことになり、心血管系疾患のリスクとして重要視されている。総コレステロール(TC)200mg/dl未満、LDLコレステロール120mg/dl未満、中性脂肪(TG)150mg/dl未満、HDLコレステロール40mg/dl以上が目標値であるが、冠危険因子の数によってコントロールの目標値はさらに厳しくなる。
② 糖尿病性腎症
糖尿病性腎症では高血糖が持続すると、糸球体細胞には大量のブドウ糖が糸球体に取り込まれて細胞の代謝異常が生じその結果、コラーゲンなどの物質が蓄積されて形態的・機能的異常を生じる。血圧調節機構が破綻しており糸球体内圧が上昇し、蛋白尿が出現する。臨床症状としては、蛋白尿、腎機能低下、高血圧、浮腫などが挙げられる。進行すると腎不全にいたる。
予防と治療には血糖管理、血圧管理、脂質管理、食事療法を行う。血糖値は空腹時血糖値110mg/dl未満、食後2時間血糖値180mg/dl未満、HbA?c6,5%未満、血圧は腎障害がない場合130/80mmHg未満、腎障害を有している場合125/75mmHg未満、脂質は総コレステロールを180mg/dl、LDLコレステロールは100mg/dl未満に保つことが推奨されている。食事療法では、塩分制限、摂取エネルギー過剰による肥満防止に重点が置かれる。腎症が進行するとカリウム制限も加わる。また早期には運動療法も有効であるが進行し腎不全期には積極的運動は行わず、体力維持程度にする。浮腫が出現した場合運動療法は禁忌となる。
③ 糖尿病性神経障害
糖尿病性神経障害は三大合併症中、最も早期に出現し、最も有病率が高い合併症である。
・運動神経障害
i 遠位多発性神経障害
神経原性に筋力低下、筋委縮を起こす。
ii 近位性運動神経障害
糖尿病性筋委縮と呼ばれ、大腿四頭筋,殿筋、腸腰筋、大も内転筋、大腿外転筋などのキンイ部の筋力低下、筋委縮をきたし、中年以降に発症する。急激に発症するタイプのものは血管障害によるもので、非対称性で疼痛、感覚脱失を伴うが、予後良好である。緩徐に発症するものは代謝障害と考えられ殿部、大腿部に好発し、対称性で疼くような痛みを伴う。
iii 単神経障害
血管病変が原因と考えられ、正中神経、尺骨神経、腓骨神経、大腿神経に急激に発症し、3~6か月で軽快する。
・知覚神経障害
① 小径線維の障害
下肢末端に始まる左右非対称の疼痛、異常感覚が生じ、徐々に上行する。疼痛が軽度の場合、冷感、しびれ、焼ける感じ、などを訴える。疼痛が重症化すると、灼熱痛、電撃痛、痙攣のような痛みを生じる。疼痛が夜間に増悪し、両足の温暖、寒冷に伴い増悪するPainful neuropathyがある。
② 大径線維の障害
アキレス腱反射の消失、振動覚、位置覚の障害が起こる。深部知覚障害、下肢腱反射の消失、電撃痛、膀胱直腸障害など高度の自律神経障害の併発を、Pseudotabes diabetesと呼ぶ。
① 病態
2型糖尿病に生じる。インスリン欠乏はDKAに比べて相対的である。そのため脂肪分解がDKAほど進まず、したがってケトン体生成もDKAほど進行しない。原因として感染、高カロリー輸液、薬剤投与などのなんらかの誘発因子があることが多い。
脱水による腎血流の低下がブドウ糖排泄を低下させ、さらに高血糖を増悪させる。高齢者の場合すでに存在している腎障害や口渇意識の低下が著しい高血糖と脱水につながるとされている。
検査所見では著しい高血糖と高浸透圧(通常320~350mOsm/L以上)を認め、高浸透圧の程度に比して、BUNやNAも高値を示す。pHは7,3以上である。血漿浸透圧は2×(Na+K)+血糖値/18+BUN/2,8で求めることが可能である。
② 臨床症状
意識障害、脱水症状、血圧低下、消化器障害、循環器障害などを認める。
③ 治療
基本的治療方針はDKAと同様である。しかし脱水の補正が中心であるためインスリン投与はDKAより少量でよい(時間当たり5単位以下)。多くは著名な脱水のため血圧は低下し循環虚脱の状態にあり、この状態を脱するまでは輸液として生理食塩水を用いる。
・低血糖
インスリンやSU薬による治療の合併症として低血糖がある。インスリン療法が確立した当時から、インスリンの有用性とともにその毒性が喚起されてきたが、未だ重症低血糖による死亡事故や中枢神経障害による永続的な機能障害の発生は完全に制圧されてはいない。
① 病態
正常状態では、中枢神経系はそのエネルギーを100%ブドウ糖に依存しており、血糖値の低下に対しては様々な拮抗調節反応が備わっている。血糖値が80mg/dl付近まで低下すると、まずインスリンの分泌が抑制され、70mg/dl付近まで低下すると、グルカゴン、アドレナリンが分泌される。さらに60mg/dl以下まで低下すると、成長ホルモン、コルチゾルの分泌が起こる。
② 臨床症状
低血糖症状は通常neurogenicとneuroglycopenicに分けられる。Neurogenic症状は低血糖によって誘発された自律神経系の変化に基づく反応である。自律神経症状には自覚症状として不安、神経質、動悸亢進、異常知覚が、他覚所見として発汗、蒼白、低体温、頻脈、高血圧、不整脈、瞳孔拡大がある。これらの症状は血糖値が55mg/dl程度まで低下すると出現し、警告症状という。血糖値が50mg/dlを下回るとneuroglycopenic症状と呼ばれる中枢神経の機能低下による症状が出現する。中枢神経症状の自覚症状として、頭痛、かすみ目、一過性複視、異常知覚、空腹感、吐気、倦怠感、眠気、被刺激性、眩暈がある。また他覚所見として錯乱、奇異行動、発語困難、興奮、嗜眠、失語、失調、眼振、麻痺、痙攣、昏睡、浅呼吸、徐脈がみられる。
③ 治療
意識が保持され経口摂取が可能な場合にはブドウ糖10~20gを経口摂取させ、症状が治まれば食事を取らせる。経口摂取が不可能な場合、同居者によるグルカゴン1㎎の筋注あるいは皮下注が有効である。
医療機関では、50%のブドウ糖液20~40ml(小児は10ml)を静注、回復が十分でない場合は5%ブドウ糖液を点滴し、血糖値を100~200mg/dlに保つ。数時間以上昏睡が続いていた場合には脳浮腫の可能性があり、デキサメサゾンやグリセオールを開始する。
○慢性合併症
・糖尿病性壊疽
好発部位は足趾、踵部、中足骨骨頭部の過重負荷が大きいところに多いが、足背部にも発生する。定期的な足のチェックとフォローが必要であり、またハイリスク患者の抽出、教育、指導と非潰瘍性足病変の治療が予防に重要である。ハイリスク患者の特徴と潰瘍危険因子は①罹病期間が長い(10年以上)、②男性、③血糖コントロール不良、④末梢神経障害、網膜症、腎障害合併、⑤末梢循環障害合併、⑥足潰瘍の既往、⑦足変形、⑧足部のROM制限、⑨爪変形などがある。PT時には壊疽の有無を確認しておく必要がある。
① 糖尿病性足部潰瘍
患者の多くは、知覚低下により切傷、熱傷、靴づれに気付かず、これに感染が合併することで潰瘍、壊疽と進展する。血糖コントロール不良も少なからずこれに関与し、まれに骨髄炎、敗血症に至ることもある。発症・進展は下記のように種々の因子の複雑な相加・相乗効果で完成する。
糖尿病性神経障害(知覚神経障害、運動神経障害、自律神経障害)
末梢神経障害
感染
高血糖
② 虚血性壊疽(動脈閉塞性壊疽)
動脈閉塞性壊疽では、糖尿病合併の患者が多い。下肢の主幹動脈閉塞の病理所見は、粥状硬化と、血栓形成で、非糖尿病と異なることはない。しかし、糖尿病患者では、脛骨、腓骨、足背動脈両側が閉塞している場合が多く、非糖尿病患者の好発部位とは大いに異なる。
③ シャルコー足(関節)
シャルコー足は神経障害を有する足に起こる骨と関節の破壊性変化、変形である。外傷等に引き続き急性期には片足に熱感、発赤、腫脹を認める。単純X線では初期には異常が見られず、骨シンチにて検出できる。蜂窩識炎との鑑別が重要であるが困難な症例もある。シャルコー足では、皮膚潰瘍は少なく、下肢挙上で腫脹が軽減することが特徴である。
治療は安静、免荷、固定が重要である。
・大血管障害
糖尿病は脳血管障害や冠動脈疾患のリスクを高度に上昇させる。
① 脳血管障害
脳血管障害の発生率は非糖尿病患者に比べると約2倍にも増加する。中でも脳梗塞が重要で、糖尿病における脳梗塞の特徴は中、小の梗塞、多発性梗塞が多いことである。また脳梗塞の各臨床病型の特徴から考えると、糖尿病はアテローム血栓性梗塞とラクナ梗塞の危険因子と考えられている。
② 冠動脈疾患
糖尿病の合併症の多くは冠動脈疾患に基づく心血管系の異常、うっ血性心不全、高血圧、腎不全に関連している。糖尿病は冠動脈疾患の独立した危険因子であり、冠動脈疾患は成人糖尿病患者の死亡原因第1位を占め、非糖尿病患者の約3倍といわれている。
糖尿病に合併した冠動脈疾患の特徴として①無痛性発症の心筋梗塞が多い、②心筋梗塞急性期のポンプ失調症が多く、死亡率が高い、③冠動脈疾患の長期予後は不良である、④無症候性心筋虚血が多い、⑤びまん性・末梢冠動脈病変が多く、しばしば冠血行再建が困難であることなどが挙げられる。
① 緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)
1型糖尿病の亜型の1つに位置づけられる。SPIDDMは「当初は食事療法や経口血糖降下薬で治療が可能な2型糖尿病の病態を呈するが膵島自己抗体が持続陽性で緩徐にインスリン分泌が低下し、最終的にインスリン依存状態となる糖尿病と定義される。」臨床においては、SU薬などによって治療されると、インスリン依存状態へ不可逆的に進行し、重篤な合併症をまねきやすいこと、正しい診断に基づいて、早期にインターベンションができれば、インスリン依存状態まで進行させず、血糖コントロールが容易に行えることが重要である。糖尿病発症より3~6か月以上インスリン療法を必要としない糖尿病でGAD抗体が陽性かつ、進行性の内因性インスリン分泌低下が認められればSPPIDDMと診断される。GAD抗体価が10U/ml以上の場合にはSU薬は使用せず、血糖コントロールにはインスリンを用いる。10未満の場合には慎重に経過を観察する。
② 劇症1型糖尿病
劇症1型糖尿病は、「非常に急速でほぼ完全な膵β細胞破壊の結果生じる糖尿病」と定義される。急性1型糖尿病の約20%を占める。診断には日本糖尿病学会のスクリーニング検査と劇症1型糖尿病診断基準(表1)を用いる。その発症には遺伝因子とウイルスなどの環境因子の影響が示唆されているが未だ不明な点は多い。治療はインスリンを用いた血糖コントロールがおもである。
・スクリーニング基準
1.糖尿病症状発現後1週間以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る。
2.初診時の血糖値が288mg/dl(16,0mmol/l)以上である。
③ 小児1型糖尿病
小児1型糖尿病の最大の特徴は発症時期が早く、患者がこどもであることである。血糖コントロールに用いるインスリン注射に付きまとう恐怖心や病気の不安を和らげる精神的フォローも重要になる。治療は他の病型と同様にインスリン補充療法・食事療法・運動療法は柱となる。
① 糖代謝への作用
インスリンの最も 重要な標的細胞は肝・骨格筋である。骨格筋は量が多く末梢でのグルコース利用の主たる場所である。インスリン注射により筋のグルコースの取り込みが増え、血糖は速やかに低下する。肝臓におけるグルコースの生産はインスリンにより抑制され、これは空腹時血糖値の設定に大きく貢献する。
② 脂肪酸代謝への影響
インスリンの最も重要な標的細胞は脂肪組織、肝臓である。健常者では空腹時でも血中の遊離脂肪酸は低く抑えられているが、インスリン欠乏状態では遊離脂肪酸濃度が上昇する。またインスリンを注射すると血中の遊離脂肪酸濃度が減少する。これらはインスリンが低濃度でトリグリセリドの分解を抑制するために起こる。さらに高濃度のインスリンは脂肪酸の合成を促進する。インスリンはまた肝臓において遊離脂肪酸からのケトン体生成を抑制する。
③ アミノ酸代謝への影響
インスリンの最も重要な標的組織は骨格筋・肝臓である。インスリン欠乏状態では蛋白質合成は低下し、蛋白質の分解が進んでいるが、インスリンはこれらを正常化する。インスリンはまたDNA合成や細胞の増殖、分化、成長などを促進する。
・インスリン処方の実際
① 一般的処方
健常者のインスリン分泌は、食事による血糖値上昇にあわせた追加インスリン分泌と夜間などの血糖値が安定しているときに分泌されている基礎インスリン分泌の2相に分けられる。2型糖尿病の多くでは基礎インスリン分泌が比較的保持され、追加インスリンが遅延、低下している。そのため主に追加インスリンの補償を目的とした混合型インスリンの朝夕2回/日注射が一般的である。
② 強化インスリン療法
超速効型や速効型などの作用時間の短いインスリンを一日に数回(2~4回が一般的)注射する方法である。1型糖尿病や重症例の2型糖尿 病では基礎および追加のインスリン分泌が障害されており両者とも補償する必要がある。そのため血糖自己測定(SMBG)と組み合わせて血糖値を治療内容にフィードバックすることによりいっそう良好な血糖値コントロールを可能にする。インスリン頻回注射法や持続皮下インスリン注射法がある。
しかし強化インスリン療法には種々の問題点も指摘されている。
・従来手法に比べ手技が煩雑
・重症低血糖をきたしやすい
・体重が増加しやすい
・インスリンの副作用
インスリン療法の副作用として主に低血糖とインスリンアレルギーが挙げられる。
① 低血糖
インスリン療法による厳格な血糖コントロールの有用性が指摘されているが、これにより低血糖のリスクは数倍増す。繰り返す低血糖や昏睡に至るような重症低血糖ほ中枢神経に悪影響を及ぼし生命をもおびやかす。
・特徴
1,肝臓からの糖放出が抑制される
2,インスリンの残存により末梢でのケトン体利用が亢進されるため、脳での使用量が減少し中枢神経障害に至る。
3,グルカゴン分泌反応が障害される
4,自律神経障害を伴っている場合エピネフィリン反応が低下している。
・インスリンの投与法
① シリンジ
バイアルから専用のシリンジにてインスリンの必要量を吸引し投与する方法。皮下注射、静脈内投与などに用いられる。
② ペン
ペン型注射器にカートリッジを装着するタイプとペン型の使い捨てタイプがある。カートリッジ式の場合カートリッジと使用する注射器の適応に注意する。バイアルからインスリンを吸引する必要がなく、携帯に便利であり、針も細く痛みがあまりないなどの利点がある。最近はこのタイプが主流。特にインスリン頻回投与法などに適している。
③ ポンプ
腹壁皮下に留置した翼状針を用いて、体外のインスリン注入器(インスリンポンプ)より超高速型、あるいは速効型インスリン製剤を24時間持続的に投与する。インスリン持続皮下注入法という。ラインがあるためPT時とトランスファーなどには特に注意が必要となる。
・食事療法の原則
① 適正な総エネルギー量の食事
食事の量の問題である。標準体重を保ち、社会生活をおくる上で必要最小限のエネルギー量とする。肥満の是正が特に重要とされる。
② バランスの良い食事
炭水化物、蛋白質、脂質の三大栄養素の適正配分と同時にビタミン・ミネラルといった微量栄養素や食物繊維が不足しないようにすることが必要である。
③ 合併症を防ぐための食事
血糖コントロールに役立つだけでなく、高血圧や高脂血症あるいは腎症予防にも通じる食事であることが期待される。そのためには、栄養素の量だけでなく質にも注意する必要がある。
④ 規則正しい食事時間
薬物療法を行っている場合、低血糖防止のためにも規則正しい生活が重要である。また食後の高血糖を抑えるには、よく噛んでゆっくり食べることが大切である。一度にたくさん食べるような食事は避ける必要がある。
⑤ 生涯にわたってつづけられる食事
何より大切なのは続けられる食事療法であることである。患者にとって食べる楽しみを持ちつつ、養生のできる、無理のないものでなければ食事療法を続けることは難しい。
栄養素別の注意点
① 糖質
糖質の摂取はその量と質に注意する。摂取エネルギーの50~60%を炭水化物から摂取することが日米の糖尿病患者の食事構成として進められているが、これは伝統的な日本食の比率に近い。さらに同じ食事を与えても食物繊維が豊富でGlycemic Indexの低い食事が理想である。
さらに同じ炭水化物でも、単純糖類と複合糖類とでは糖・脂質代謝に対する影響は大きく異なり、複合糖類の形体での吸収が良い。単純糖類の過剰摂取は糖・脂質代謝異常を引き起こすとされている。
② 蛋白質
蛋白質の摂取は腎症に対する影響を十分に考慮する必要がある。糖尿病性腎症に対しては多くの場合、蛋白制限が行われる。
しかし、蛋白質制限下で十分なエネルギー摂取を確保しようとすると、比較的高脂肪食となる。このことが糖・脂質代謝に悪影響を与えることを考慮して献立を作成する必要がある。現在日本では1.0~1.2g/体重が適正とされている。
③ 脂肪
脂肪摂取の多いものから耐糖能障害ならびに糖尿病発症率が優位に高いことが、疫学的調査によって明らかにされている。脂肪からのエネルギー摂取比は25%を超えないように勧告されている。近年日本の若者の食が欧米化するにつれ脂肪摂取量が増加していることが危惧されている。
脂肪摂取量の制限(エネルギー比25%以下)、飽和脂肪酸(動物性)・一過不飽和脂肪酸(植物性)・多価不飽和脂肪酸(魚類)の比率を1:1.5:1にするなどの改善が必要である。