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      筋ジストロフィーのリハビリについて




 筋ジストロフィーのリハビリテーション



(4)ステージ別の理学療法


T.歩行期(stage1-4)

 歩行可能な時期においては、日常生活をごく普通に過ごすことがまず第一である。重度な知的障害などで困難な場合を除いては、普通学級への通学は十分に可能である。ただし、体育の際には能力的な面で配慮が必要となる。運動制限は必要ない場合がほとんどであるが、翌日以降に疲労を持ち越さないよう配慮する。
 この時期に起こりやすいROM制限は、下腿三頭筋短縮による足関節背屈制限と後脛骨筋短縮による外反制限、ハムストリング短縮による膝関節伸展位での股関節屈曲制限と膝関節伸展制限、および大腿筋膜張筋短縮による股関節内転・伸展制限である。歩行期には脊柱変形はほとんど認められない。また、筋力低下が著明なのは、頸屈曲筋、体幹屈曲筋および股関節内転筋である。よって筋力低下の拮抗筋の短縮により将来生じる可能性のある頸屈曲制限と股関節内転制限にも留意する。
 歩行期のリハとしては、@移動能力の賦与、A廃用性筋萎縮の予防、B下肢関節拘縮・脊柱変形の増悪予防、C心理的賦活、D心肺系への適度の負荷、E骨粗鬆症の予防、F肥満の予防、のために起立・歩行訓練を行う。

a.歩行前期(stage1‐2)
 歩行に実用性があり階段昇降が可能な歩行前期は、日常生活が自立しているため二次性の筋力低下が生じる可能性はほとんどない。しかしながら一次性機能障害は徐々に進行しており、左右非対称な動作を行う危険性もあるため、定期的な検査を実施しておく。理学療法士が検査数値と動作方法の質的変化および臨床経過を踏まえた評価から将来的に二次性のROM制限が発生・増悪して能力低下を引き起こす危険性があると判断した場合は、それらを予防するために治療や動作指導を実施すべきである。

b.歩行後期(stage3‐4)
 歩行後期に入ると、重心の垂直移動を伴う動作、例えば床からの立ち上がりや階段昇降などの動作能力が失われるが、重心の水平移動のみの動作、例えば歩行や四つ這いなどは保たれている。
 基本的動作能力は一連の連続した動作であるが、DMDでは動作の連続性が途切れてしまう。つまり、歩行するためには立ち上がることが不可欠であるが、動作能力としては歩行よりも先に立ち上がりが不可能となる。また、病勢の進展により動作遂行時間が延長すると実用性は低下する。動作遂行に努力が必要となり、介護者が手伝う機会が増える。そしてその動作ができなくなると、二次性機能障害を生じる危険性が高まる。
 この時期には、可能な限り立位・歩行訓練により二次性機能障害であるROM制限の予防と筋力の維持に努める。しかしながら、患者の全体像を見定めた上で車椅子使用を、立位姿勢が不良な場合には装具作製を考慮する。


※ この時期にやっておくこと

1.伸張訓練・関節可動域保持訓練

下肢:下肢では股関節屈曲筋群、大腿筋膜張筋、大腿直筋、膝屈筋群、下腿三頭筋などに歩行可能な初期から短縮が認められてくる。特に、二関節筋である大腿直筋が短縮すると膝伸展機能よりも股関節屈筋として働き、大腿筋膜張筋の短縮とともに股関節屈曲拘縮を助長する結果となる。
 伸展訓練の手技は、腹臥位をとらせ腰椎前彎を防止したのち、骨盤固定を確実にする。そして股関節内転を加えながら伸展方向へゆっくりと伸張を図る。さらに大腿直筋の伸張を加えるために、股関節伸展位で膝関節の屈曲を行う(図20)。また、背臥位での方法は、ベッド端より一側下肢を垂らした肢位をとらせる。この肢位で骨盤固定を行い、垂らしている下肢の股関節屈筋の伸張を行う。その際、大腿筋膜張筋が短縮していれば必ず股関節屈曲・外転位となるので、伸展方向への伸張と同時に股関節内転運動を加え、大腿筋膜張筋の伸張も行わなければならない。
 膝屈筋群の伸張は背臥位で対側下肢を伸展位で固定し、伸張側膝関節伸展位で股関節屈曲をゆっくりと行っていく(図21)。膝の屈曲拘縮は登攀性起立の障害となるばかりでなく、膝伸筋の有効な筋力発揮を阻害し、歩行障害の重大な原因となるので注意が必要である。
 足関節では、下腿三頭筋と後脛骨筋の短縮により内反尖足が生じる。背臥位でセラピストは踵部を握り、前腕部を患児の足底にあてがい足関節を外反気味に背屈し、後脛骨筋の伸張も加え内反尖足の予防に努める。別法としては、傾斜台(tilt table)を使用し、膝関節伸展位でベルト固定を行っての起立保持訓練が、自重を利用した下腿三頭筋の伸張訓練となるので効果的である。

上肢:肩関節については筋力低下が早期より始まるが、可動域制限は進行期まで出現しにくい。
  肘関節および前腕では回内位拘縮が生じやすい。肘関節が完全伸展できなければ四つ這い動作に影響を及ぼすので、肘関節伸展、回外方向への可動域訓練を行う。
  手関節は掌背屈制限、手指屈筋腱の短縮がおき手指変形の原因となる。伸張訓練は肘伸展、前腕回外位で手指を伸展位に保ちながら手関節を背屈する。




図20 股関節の伸張訓練





図21 膝屈筋群の伸張


2.筋力維持訓練

 筋力維持訓練は、筋の廃用性萎縮を防ぐことに主眼がおかれるため、積極的な抵抗訓練よりも患児の筋力に応じた自動運動や自動介助運動がなされる。特定の筋を中心とした筋力維持訓練よりも、むしろ寝返り・起き上がり動作、四つ這い動作訓練など体幹筋を含めた全身の筋を使用する起居移動動作訓練が望ましい。また、水泳は浮力と抵抗を利用した運動であるため、ゆっくり泳げば適度な全身への負荷となり、非常によい筋力維持訓練となる。ただし、長時間にわたって水につかっていることは体温の低下につながり、筋疲労や筋力低下を招くので注意が必要であり、温水プールが望ましい。




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